蝶の中には、マダラチョウや、ドクチョウの仲間のように、体内に毒をもっている種類がいます(蝶の護身術参照)。この様な蝶のまねをして自分の身を守ることも「擬態(ぎたい)」と呼ばれます。
日本で身近に見かけることが出来るこの擬態は、ジャコウアゲハに見られます。ジャコウアゲハはウマノスズクサを食草として、その草に含まれる毒を幼虫の時に体内に蓄え、成虫になってもその成分を体内に保持しています。この様なジャコウアゲハを食べた天敵は、気持ち悪くなって食べた獲物を吐き出してしまいます。学習能力のある鳥などは、一度この様な経験をすると二度とジャコウアゲハを食べようとしません。
この様な習性を利用したのが、ジャコウアゲハによく似た、クロアゲハやオナガアゲハです。一度ジャコウアゲハで懲りた鳥は、ジャコウアゲハに似たオナガアゲハを食べようとしません。オナガアゲハはジャコウアゲハに似ることによって、身を守ることが出来るのです。ちなみに、この例の場合、ジャコウアゲハは毒をもっている「モデル」とよばれ、それを擬態しているオナガアゲハやクロアゲハは「ミミック(英語で「真似」という意味)」と呼ばれます。
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ヘンリー・ベイツ(Henry W. Bates)
De Vries 1997より
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この様な関係は、イギリス人のヘンリー・ベイツ氏(Henry W. Bates 1825-1892)という探検家が1849年ごろから南米大陸を訪れたときに、ドクチョウに似たシロチョウの仲間に気付いたのがはじまりで、以来、「ベイツ型擬態(Batesian
Mimicry)」と呼ばれています。
昆虫類は、多くの種類が擬態していて、色々と研究されていますが、なぜ、どうやって、昆虫たちがこの様なシステムを作り上げてきたのかは、まだ、誰にも分かりません。また、この様な習性を勉強することによって、蝶たちがどのように進化してきたのかを研究している人たちが世界にたくさんいます。
擬態が詳しく研究されている蝶で、北米に生息するアオジャコウアゲハがいます。擬態も研究をすればするほど、色々な発見があって興味ある分野といえます。
北米アオジャコウアゲハをめぐる擬態関係について
モデルとミミックの関係
その他擬態例