■ドクチョウの仲間は、南アメリカ大陸を中心として栄えている蝶で現在60~70種類ほど確認されています。あまり日本ではお目にかかれない蝶ですが、海外では昆虫園などで見ることができます。ドクチョウは擬態のモデルとして、数多くの蝶達に真似されています。
▲トケイソウに産卵しに来た、ヒョウモンドクチョウ(アメリカ、カリフォルニア州)
ドクチョウの仲間は、南アメリカ・アマゾンを中心として栄えている60~70種類からなる蝶のグループです。
成虫は、鳥などが嫌う味の成分を体内に備えているため「ドクチョウ」の名前があります。この毒は、食草であるトケイソウの仲間(Passifloraceae)から取り込まれたものと思われていますが、現在のところそれを証明することが出来ていないため、成虫が体内で合成している可能性もあるといわれています。
ドクチョウとトケイソウの関係は密接で、トケイソウを見つけてそこで待てば、そのトケイソウを食草とするドクチョウがやってくるといわれています。食草も見つけやすいため、ドクチョウは最も研究されている蝶のグループといわれています。
ドクチョウ族は、スレンダーな腹部、長い触角、大きな複眼が特徴です。複眼については、蝶の仲間で最も視界が良いと言われ、メスのドクチョウは植物の葉の形を見て食草を探す事が出来ます。
メスは、食草に一つずつ卵を産み付ける種類と、一カ所に沢山産み付ける種類がいます。メスは卵の有無を視覚によって確認していて、食草に既に卵があるときは、産卵をしようとしません。トケイソウの中にはこの習性を利用して、茎の一部に卵のような黄色い突起を作り、産卵を防御するものがあります。
ドクチョウの成虫は花の蜜を吸いますが、ドクチョウ属(Heliconius)は蝶の仲間で唯一、口吻から唾液が出て、花粉に含まれている栄養を溶かし蜜と合わせて栄養源とすることができます。花粉の栄養は、メスの生殖器のメンテナンスに利用されます。
南米でドクチョウを真似をする、無毒の蝶の存在に気が付いたヘンリー・ベイツは、「ベイツ型擬態」という説を唱えました。又、違うドクチョウの種類でも、互いに非常に似ている模様をしている事に気づいたフリッツ・ミュラーは「ミュラー型擬態」を提唱しました。
幾つかの種類は、夜集団になる習性があり、同じ個体が同じ場所に毎晩戻ることが観察されています。
ドクチョウ族は、10属からなっています。
- アサギドクチョウ属(Philaethria Billberg, 1820)
- キオビドクチョウ属(Podotricha Michener, 1942)
- ウラギンドクチョウ属(Dione Hübner, [1819])
- ヒョウモンドクチョウ属(Agraulis Boisduval & Le Conte, [1835])
- オビモンドクチョウ属(Dryadula Michener, 1942)
- チャイロドクチョウ属(Dryas Hübner, [1807])
- ヒメチャイロドクチョウ属(Eueides Hübner, 1816)
- ドクチョウ属(Heliconius Kluk, 1780)
- ドリスドクチョウ属(Laparus Billberg, 1820)
- マルバネドクチョウ属(Neruda Turner, 1976)