■日本には生息していない仲間なので、なじみの薄い蝶です。南米大陸を中心として栄えている蝶の中まで、その色彩や形態は一見蝶とは思えないような種類までいます。全世界に1,000~2,000種類いると言われており、最も研究されていない蝶のグループです。
シジミタテハは名前の通り、シジミチョウとタテハチョウの中間的特徴を持った蝶のグループです。その90%程が南米大陸に生息しており、その他は北米大陸、東南アジア、そしてヨーロッパに少数分布しています。その変化に富んだ羽の形や模様は目を見張るものがあり、蛾のようなものから「生ける宝石」と呼ばれるニジイロシジミタテハ属の仲間など色々と楽しませてくれます。
シジミタテハの仲間は、大きさも小さく、また、その生態があまり知られていないので、蝶の中まで最も謎の多いグループといえます。また、多くのシジミタテハは、蛾のように羽を開いて葉の裏に止まったりしており、網などで枝をたたいて採集しなければならないので、標本の数も圧倒的に少ないといえます。
シジミタテハ科がタテハチョウ科でもシジミチョウ科でもない理由
シジミタテハはシジミチョウのように小さく、タテハチョウのように前脚が特殊化して、シジミチョウとタテハチョウの中間的特徴があるといわれていますが、外見で見るとシジミチョウとは区別できないほど似ているときがあります。幼虫の生態についても、シジミチョウの仲間のように、背中から蜜を出して、アリと共存する種類が多く、一部の学者では、シジミチョウ科にこのシジミタテハを含めることがあります。
では、どの様な点がシジミチョウと違うのでしょう?
- シジミタテハのオスは前脚が特殊化して、歩く脚は4本しかない。(シジミチョウは6本)
- 下唇髭(かしんしゅ:パルピ)の形態に違いがある。 →下唇髭については、成虫の体:頭部2を参照。
- 蛹の時にかける、帯糸(たいし)の位置が特徴的。 →帯糸については、蛹の体のページを参照。
- 幼虫の形態に違いがある(特に蜜が出る蜜腺(みつせん)の位置)。幼虫の蜜腺については、シジミチョウのものと異なるルートで独自に進化したものと思われる。
最近では、DNAの研究も進み、シジミタテハはシジミチョウよりもむしろタテハチョウやシロチョウの仲間に近いとされています。
また、この仲間は特に幼虫時代についてがまだまだ研究不足で、これからも色々と発見されていくことでしょう。Charis属の仲間などは、幼虫時代に枯葉(!)を食草とするのがいて、蝶の世界も奥が深いと感心させられます。
シジミタテハの事について詳しく調べられたい方は、Philip J. DeVries氏のThe Butterflies
of Costa Rica and Their Natural History Volume IIがおすすめです。(参考文献参照)
研究不足のこの科は、次のような亜科が含まれますが、参考文献も少なく、全てを網羅し切れているかは分かりません。
旧大陸(ユーラシア、アフリカ)
新大陸(南北アメリカ)