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消化のページ

■昆虫たちの消化器官は私たち人間と非常に似た仕組みとなっています。蝶たちがどのように栄養を吸収しているのかを見てみましょう。


幼虫の場合

幼虫はとにかく食べ続けて体を大きくする期間です。大あごでむしゃむしゃとあっという間に葉や枝を食べてしまいます。幼虫は唾液腺(だえきせん)を持ちますが、成虫のとき唾液(だえき)を出す唾液腺は、糸を吐くのに使われていて、別の腺から唾液が出ます。

幼虫の大あごで刻まれた葉は食道(しょくどう)を通って胃(い)に入り、そのあと中腸(ちゅうちょう)・後腸(こうちょう)に入り栄養が吸収されます。「食道」とか「胃」があると複雑そうに聞こえますが、実際は単純なまっすぐな管で最初から最後までつながっており、そのある部分を「食道」と呼んでいます。

成虫の場合

蝶の成虫は花の蜜など、液体のものを飲み、幼虫のように葉などの固形物を噛み砕いて食べたりしません。そのため、エサを噛み砕いたりする大あごがなく、代わりにストロー状になった口吻(こうふん)を使って、エサを食べます(成虫の体:頭部2参照)。花の蜜まで口吻を伸ばし、頭部内にあるポンプを使い、蜜を吸い上げます。すでに液状のものを吸うため、多くの種では唾液(だえき)を口の先から出すことがありません。唾液腺(だえきせん)は口吻の根元にあり、主に消化を助けるための成分を出すと思われていますが、時折口吻から唾液を垂らし、固形物の栄養素を溶かし、それを吸い戻すことが観察されています。唾液以外にも、自分の尿を利用した「吸い戻し」をする姿も観察されています。→蝶の行動:吸水


成虫の消化器官
(概念図:大きさなど正確に書かれたものではありません)
(1986 Scottより改図)

口吻(こうふん)
咽頭(いんとう)
唾液腺(だえきせん)
食道(しょくどう)
胃(い)
中腸(ちゅうちょう)
マルピーギ管(まるぴーぎかん)
後腸(こうちょう)
直腸(しょくちょう)
体節間膜(たいせつかんまく)

頭部内のポンプの仕組みは単純で、咽頭(いんとう)の大きさを変化させることによって、液体を吸い上げています。咽頭を膨らませると、口吻から液体が吸い込まれ、その後口吻を閉め、咽頭を縮めると食道(しょくどう)へ液体が流れていくという仕組みです。

食道を通った液体は胃へと流れ込みます。成虫の胃は幼虫の胃より大きく、沢山のエサを蓄えておくことが出来ます。その後中腸(ちゅうちょう)後腸(こうちょう)直腸(ちょくちょう)へと移動し、最後に尿として排出されます。

中腸では主に食物の消化と、栄養素を取り込みます。後腸と直腸は主に水分を吸収します。成虫は花の蜜などを主に食べますので、幼虫のように固形を消化する必要が無いので、中腸が小さくなり、蜜を蓄えておく、胃が大きくなっています。また、消化液は主に砂糖を分解する一種類の酵素(こうそ)からなっています。

また、昆虫には私達人間のような腎臓(じんぞう)がありません。その代り、マルピーギ管という器官が中腸の後ろから6本(左右3本ずつ)、体の隙間に伸びています。体の隙間には、体液が循環しているので、そこから不要な成分(尿酸(にょうさん)など)を吸収して、後腸へ送り出します。つまり、マルピーギ管は体液をきれいにする、フィルターのような働きをしています。また、体の中の水分と塩分の濃度をコントロールする機能も、マルピーギ管が担っています。→蝶の体と浸透圧

「マルピーギ」管はイタリアの解剖学者、マルセロ・マルピーギ氏(Marcello Malpighi 1628-1694)が発見したことから、その名前が使われています。


参考文献
Scott, James A.. 1986. The Butterflies of North America, a natural history and field guide. Stanford; Stanford University Press.本の情報のページへ

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