■グリーンランド、カナダ、アメリカ合衆国からなる新北区はその特徴からユーラシア大陸を含めた全北区として扱われることがあります。北アメリカ大陸の年齢自体が若いため、蝶の発展も他の大陸と比べ遅れている感じのする地域です。
北アメリカの蝶は、種類数も少なく(約700種。世界の蝶の種類の約4%)日本の図鑑で紹介されることが少なく、なじみの薄い蝶が多いのが実状です。新北区はアラスカの方にあるベーリング海峡をつたって、何度も蝶たちが旧北区と行き来したことが遺伝子の研究などによりわかっています。その為、旧北区との共通種も多く、新北区と旧北区を合わせて、全北区とまとめることもよくあります。
同じ様な種類が沢山いる大陸
北アメリカ大陸は、一言で言うと「これから発展を遂げるぞ!」といった感じのする地域です。つまり、日本では、かなり完成された「種」が集まっているのに対して、北アメリカは似たような種類が沢山集まっているのです。つまり、広大な大地に大きく分布を広げている種類がいるため、離れた場所では別種なのか、亜種なのかはっきりしない種が多く、未だに学者によってある種を同種としたり、別種としたりします。
例えば、図鑑によって色々な扱いを受けるキアゲハ類を見てみましょう。
アメリカキアゲハとオレゴンアゲハ。オレゴンアゲハはヨーロッパキアゲハの亜種とされています。
メスクロキアゲハとコロラドサバクアゲハ。コロラドサバクアゲハはメスクロキアゲハの亜種にされることもありますし、
別種とされることもあります。
キアゲハ類の他にこの様に似た種類が集まっている仲間では、キタテハ属、ギンボシヒョウモン属、ヒョウモンモドキ属、モンキチョウ属、ベニシジミ属などがあります。これらの種類を見ていると、アニメーションの一コマ一コマを見ているようなものもあり、ひょっとして蝶達はこの様に羽の模様を変えていったのではと想像させてくれます。
東西を分けるロッキー山脈
北アメリカに分布する蝶達は、ロッキー山脈を境に大きく分けて次のような分布パターンを持っているものに分けられます。
◆アメリカ西部に生息するもの
アメリカ西部の蝶は山地に生息する種類が多く、小型から中型の種類が多く生息しています。山地に生息しているため、オオアメリカウスバやサラツマキチョウなどは非常に多くの亜種があり、また、学者によってはそれらをそれぞれ別種扱いする人までいます。ヒョウモンチョウ類やキアゲハ類などどちらかというと地味目の蝶が多く生息しています。
◆アメリカ東部に生息するもの
全体的に見ると、アメリカ東部に生息する蝶達は、色も鮮やかで中型から大型、そして独特の種類が多く生息しています。この地域ではアオジャコウアゲハを巡り色々な擬態関係(アオジャコウアゲハの擬態関係のページ参照)が発展し、これにより進化のスピードが加速されたのかもしれません。
この様に蝶相が分かれているため、北アメリカ東部と西部では採集していても蝶の雰囲気が大分違います。
渡りをする蝶ーオオカバマダラ
カリフォルニア州の州の蝶でもあるオオカバマダラはカナダとメキシコの間を行ったり来たりする「渡り」をする珍しい蝶です。幼虫がトウワタを食べるこの蝶は、夏の間に北アメリカ北部に渡り繁殖します。成虫になった蝶は、越冬するために南部に向かい飛び始めます。不思議なのは、誰にも教えられることなく、毎年同じ森に蝶達が集まってくるのです。 →オオカバマダラのページへ