蛾の場合、活動が夜のため、メスがフェロモン物質を出して、オスを臭いで集めることが知られています。ところが蝶の場合、メスはそのような機能を持っていません。昼に活動をする蝶達はオスがひたすらメスを探すことになります。メスを効率的に見つけるためにオスの蝶達は色々な行動にでます。
◆食草の周りをとにかく飛び回る
▲メスを追いかける3頭のモンシロチョウ(千葉県)
キャベツ畑を飛び回るモンシロチョウを見たことはありませんか?または、菜の花の周りを飛び回るモンシロチョウ。デタラメに飛び回っているようで、実はちゃんとモンシロチョウのオス達は、彼らの食草から羽化してくるメスを探しているのです。一部の蝶は食草から離れることなく、周りに集まってくるメスなどを待っています。
◆なわばり
▲道の横でなわばりを張る、エルメスベニシジミLycaena hermes(アメリカ、カリフォルニア州)
多くの蝶は、地面や木の枝などにとまって、そばを通るもの全てを追いかけて、またしばらくすると元の場所に戻ってくる習性を持っています。山地では、ミドリシジミの仲間が他のオスを追い回した後、同じ葉っぱにとまったりします。このように、蝶の中には縄張りを持つ種類がいます。一カ所にとどまり、メスが来るのを待った方が効率的というわけです。
◆ヒルトッピング
▲山頂を旋回するウスイロトラフアゲハPapilio eurymedon(アメリカ、カリフォルニア州)
蝶の不思議な習性の一つとしてヒルトッピング(Hill Topping)というものがあります。これは、蝶が山頂に集まってくる現象です。この様に一部の蝶は地理的特徴のある場所(山頂や林の中の開けた場所など)に集まる事があり、この様な場所をレック(Lek)と呼んでいます。レックは、食草やエサとなる花などがちらばっていて、オスとメスが会うチャンスが少ない種類が多く利用しているようです。
ヒルトッピングはかつて、蝶が上に向かって飛ぶために山頂に集まるのだとか、食草がそこに集まっているからとか、風が山頂に向かって吹いているから、など様々な説がありました。
1967年シールズ(Shields)氏はアメリカのサンディエゴの丘に集まるチョウたちを徹底的に調査して、山頂に集まってくる蝶のメスは、多くが新鮮で交尾をしておらず、また、交尾をした後は山を下る習性がある事を突き止めました。そして、交尾をしていないメスを低地で放つと、多くのメスが山頂に到達するのに対して、交尾したメスは山頂に戻ってくることはありませんでした。
この様な調査から、ヒルトッピングはオスと、未交尾のメスが出会うための行動ということが証明されました。
平野の中にある丘には沢山の蝶が集まってくる(アメリカ、オレゴン州にて)
◆蝶道(ちょうどう)
蝶道も、蝶達が出会うために発達した行動と思われています。 →蝶道のページ
オスと比べて、蝶のメスはあまり動かず、また、飛んだとしてもゆっくりと飛ぶ傾向にあります。どちらかというと、探してもらう方なので、進んで飛び出していくことはないようです。これも、生き残るための知恵かもしれません。
鳥ではありませんが、蝶もメスを見つけて無事一緒に着陸したときオスはメスの前で羽を広げてアピールを始めます。蛾の中にはダンスをする変わった種類もおり、観察を始めるとなかなか楽しい行動です。