ツマグロヒョウモンのページ
■最近日本で分布を北に広げている蝶たちが目立ち始めています。その中の一種、ツマグロヒョウモンは街中でもよく見られる様になりました。
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▲ツマグロヒョウモンのオス(千葉県船橋市)
ツマグロヒョウモン(Argyreus hyperbius)はアジア地域に広く分布する、南方系のヒョウモンチョウの仲間です。普通ヒョウモンチョウの仲間は山地や北の涼しい場所を中心に分布していますので、熱帯を中心とするツマグロヒョウモンの分布はヒョウモンチョウの中では変わっているといえます。
分布が広がってきているツマグロヒョウモン
日本でのこの蝶が分布は1990年ごろまでは中部以南でしたが、最近は関東まで北上してきており、よく「地球温暖化」の題材として取り上げられます。この蝶の北上については、単純に温暖化の影響と断定できませんが、最近蝶の食草となるパンジーやビオラが増えたことも分布拡大の一因だと思われます。移動性が強く、昔から迷蝶として北海道を含む日本各地で採集された記録があります。
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▲ツマグロヒョウモンの分布北上(白水 2007より改図)
青の線が1990年頃までの分布北限。
赤の線が2006年頃の分布北限。
メスの翅の先が黒いわけ
ツマグロヒョウモンはオスとメスの模様が違い、南方でメスは体内に毒を持っているカバマダラに擬態しています。
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▲毒を持たないツマグロヒョウモンのメス |
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▲体内に毒を持つカバマダラ
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ツマグロヒョウモンの生態
幼虫が食べる植物、食草(しょくそう)は、スミレ類で、これには観賞用によく植えられている、パンジーやビオラが含まれます。パンジーの周りをゆっくりと飛び回っているメスは大抵卵を産もうとしているメスで、しばらく見ていれば卵を産むところを観察できます。
幼虫は黒にオレンジの筋が入り、棘もあります。ただし棘は毒も持ちませんし、肌の柔らかいところだとチクリとすることがありますが、基本的に害はありません。鉢の周りに黒い糞が沢山落ちていれば、その鉢から幼虫が見つかる可能性があります。メスは一頭で1000個もの卵を持っていることが知られ、被害がひどければ害虫扱いされます。
▲ビオラの根元で休んでいる幼虫
ビオラやパンジーを食べて育った幼虫は、やがてその周りをうろうろとしながら蛹になる場所を探します。鉢と壁の間など隠れた場所でよく蛹になります。蛹は頭を下にしてぶら下がった状態で、背中にはメタリックな紋が10個あります。
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▲銀色の紋を背中に持つツマグロヒョウモンの蛹
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▲羽化したばかりのツマグロヒョウモン
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▲ツマグロヒョウモンのメス(千葉県船橋市)
白水隆. 2007. 日本蝶類標準図鑑. 東京; 株式会社学習研究社.