■セセリチョウの仲間は地味で体が太く、翅が短い種類が多いため、蛾と間違われる事があります。英語でもセセリチョウは「スキッパーズ(Skippers)」と呼ばれ、他の蝶「バタフライズ(Butterflies)」と区別されることがあります。
▲イチモンジセセリ(日本、千葉県)
セセリチョウは小型から中型の蝶で、体が太く短く(翅の大きさから比べると、頭が大きい)、翅も小さい事が多いため、他の蝶と比べると「蝶らしさ」があまり無いグループです。すばやく飛び回り、網で捕らえると激しく羽ばたくのでうまく扱わないと、鱗粉(りんぷん)が剥げ落ちてしまい、また、地味な種類が多く、似ている種類も非常に多いので、他の蝶のグループとくらべると興味を持つ人は少ないようです。
このため、セセリチョウの分類もあまり研究が進んでおらず、最近になってようやくDNAなどを活用した研究が始まりました。今後セセリチョウの研究は更に進められ、新しい発見も沢山出てくると思われます。
セセリチョウの仲間は世界でおよそ3,650種類ほどいるといわれていますが、まだまだ研究が進めば増えていくと言われています。世界の分布を見ると、南北アメリカで約2,300種類(北アメリカは約260種)、ユーラシア大陸とオーストラリア大陸で約850種類、アフリカ大陸に約500種類いるといわれています。ちなみにニュージーランドにはセセリチョウは生息していません。
他の蝶から区別される理由
蝶の仲間は「セセリチョウ上科」と「アゲハチョウ上科」の二つに分けられるように、他の蝶とは少し違うグループとなっています。英語でも時々「Butterflies and Skippers」というように、蝶とは別扱いされることもあるほどです。では、セセリチョウは他の蝶と比べると、何が違うのでしょう?
1.触角の先が尖っている
蝶の触角は棍棒状(こんぼうじょう)というのが普通ですが、セセリチョウの触角の先は尖っていて、種類によっては曲がっていたりしています。これはセセリチョウ以外の蝶では見られない、独特の特徴です。中米を中心に栄えるイトランセセリの仲間は、棍棒状の触角をしています。
▲先が尖るダイミョウセセリ(左)とミヤマチャバネセセリ(右)の触角
2.前翅の翅脈(しみゃく)が分かれない
蝶の前翅の翅脈は、翅の先の方で二股に分かれたりしますが、セセリチョウの翅脈は一本のままです。
3.多くの幼虫は首が細くなっている
セセリチョウの幼虫は、よく巣をつくりその中で潜んでいます。巣の中で体の方向を変えやすくする為、首が細くなっています。
▲コツノセセリ(カリフォルニア州)の芝生で出来た巣をあけたところ
4.蛹は大抵巣の中にいて、他の蝶の様に糸によってくっついたりしていない
蝶の蛹には帯蛹(たいよう)と垂蛹(すいよう)がありますが(蛹のページ参照)、セセリチョウの場合、巣の中でそのまま蛹になる種類が多く、ぶら下がったりしません。
▲モフクミヤマセセリ(カリフォルニア州)の蛹
5.多くの場合、胸部には強力な筋肉が多くあるため大きく、すばやく羽ばたき、力強く飛ぶ
胸部の筋肉が発達していて、翅も小さいため、蛾と間違われることがあります。また、腹部は短い種類が大半を占めます。頭も体に比べると、幅が広くて大きくみえます。
6.種類によっては、とまっている時に後翅だけを広げる
セセリチョウ亜科の仲間によく見られるポーズなのですが、後翅のみを広げる独特のとまり方をします。その他の種類も翅を広げてよくとまります。翅を立ててとまる事もあります。
▲左:後翅だけ広げるとまるイチモンジセセリ 右:翅を広げてとまるダイミョウセセリ
7.一部の種類は、前翅に特別な香鱗(こうりん)をもつしくみをもっている
セセリチョウの種類によっては、前翅に香鱗が集まった性標(せいひょう)があったり、前翅の縁に香鱗がたたみこまれるしくみを持っていることがあります。
ここのホームページでは、2009年に発表された、DNAと49の体の特徴に基づいて分類されたものを紹介します。この方法によると、セセリチョウ科は次の7つの亜科に分類されます。
●アオバセセリ亜科(Subfamily Coeliadinae)
●ラッフルズセセリ亜科(Subfamily Euschemoninae)
●オナガセセリ亜科(Subfamily Eudaminae)
●チャマダラセセリ亜科(Subfamily Pyrginae)
●チョウセンキボシセセリ亜科(Subfamily Heteropterinae)
●ツチイロセセリ亜科(Subfamily Trapezitinae)
●セセリチョウ亜科(Subfamily Hesperiinae)