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標本を作ろう:続き

■展翅した蝶は、触角など揃えて、乾燥させます。完全に乾けば出来上がりです!


触角を整える

 

触角は標本をかっこよく見せるポイントです。怠らず、きれいに仕上げましょう。触角の整え方は、前翅縁と平行もしくはそれより内側に整えると、かっこよく見えます。触角が不揃いの標本は、見た目が良くありません。

触角のそろえ方には主に2つの方法があります。

(1)翅を抑えている展翅テープの下に触角を入れる方法

ピンセットや針を使って、展翅テープの下に触角を入れます。展翅版と展翅テープの間に隙間を空けて、ピンセットで触角を入れ整形します。整形は針を使ったり、紙を使ったりします。この方法だと触角をまっすぐに整形できますが、展翅版の溝の幅が広いと難しいです。

(2)小さなテープを使って、触角をはさむ方法

展翅版の幅が広くて展翅テープではさめない場合、小さなテープを作って、触角をはさみます。この時使うテープは出来るだけ薄いものを使ったほうが良いようです。厚い紙などを使うと、はずすときによく触角が折れてしまいます。

触角は出来るだけまっすぐに伸ばします。強く引っ張りすぎると、触角が切れてしまいますので、ある程度手加減が必要です。この感覚をつかむにはある程度経験が必要です。ジャノメチョウなど触角の細い蝶は引っ張るとすぐに切れてしまいます。触角の先は柔らかく、切れやすいので、出来るだけ柄のところをつかみます。

触角をきれいに揃えるコツは、蝶の頭をまっすぐにしておくことです。頭が傾いていたり、下を向いていたりするとうまく揃えることができません。頭がまっすぐにならない時は、針で抑えたり、ティッシュや綿を頭の下の展翅板の溝に詰めてしまいましょう。

展翅が終わったら、ラベルをそばにとめておきましょう。ラベルを後日用意しようとすると忘れることがあります。必ずすぐに用意しましょう。

腹部の高さを整える

触角の他に気をつけるのは、腹部の高さです。これはできるだけ平行にしたほうが見栄えが良くなります。腹部の高さは、留め針を交差させて腹部をのせたり、押さえたりして調整します。脱脂綿を使う方法もありますが、時々腹部から出た体液などが付着して脱脂綿が腹部にくっついてしまう場合もあるので注意してください。軟化展翅した蝶の場合、腹部がすでに固まっているので調整しやすいのですが、生展翅の場合、展翅して暫くしてから、下がってきたり上がったりするので、展翅後もこまめにチェックする必要があります。

展翅板を立てておくのも腹部が下がらないようにする方法の一つです。

標本作成の動画


▲標本作成の動画です。これは軟化処理をした後の蝶の場合です。
あくまでも一例です。

乾かす

基本的に昆虫類の標本は薬品処理する必要がありません。日陰で乾かせばすぐにできあがります。乾かす時間はその時期の温度、湿度と蝶の大きさによって、左右されますが、2〜3週間位が目処です。中にはどんな蝶でも数ヶ月展翅をしておく人もいます。乾燥中は日光をさけ、暗い場所に保管しておきます。特に太陽光線は、蝶の翅の色を退色(たいしょく)させるため、絶対にさけてください。また、展翅中にゴキブリなどが蝶を食べてしまうことがありますので、この様な害虫にも気をつけておきましょう。

日本の夏は、湿度が非常に高いため、秋までおいておくのも手です。逆に湿度が極端に低いところ(アメリカのコロラドなど)では、1〜2日で乾いてしまう場合もあります。

乾かしている間に、触角や腹部が歪んだりする事があります。展翅した後も、こまめに標本をチェックして、気が付いたら整形しなおしておきましょう。

展翅板からはずす

展翅板から蝶をはずすときは、なるべく湿度が低い日を選び、はずした標本はラベルを付けて標本箱に移します。展翅板から蝶をはずす時に気をつけなければならないのは、留め針を丁寧に抜くことです。あまり大ざっぱに勢いよく針を展翅板から抜くと、一緒に押さえていた展翅テープがはずれ、触角が折れたり、思わぬところで翅が破けたりするので気をつけましょう。

ラベルを付ける

ラベルは特に決まった書き方はないのですが、基本的に採集場所と採集日が分かればOKです。

理想的なラベルの書き方は次の通りです。

<採集地が日本の場合>

JAPAN: CHIBA
Funabashi-shi, Miyagidai
Grass field in Yagigaya Ryokuchi
Apr. 3, 2010
leg. Kojiro Shiraiwa

・1行目に国名(日本)と県名を書きます。
・2行目に市町村、そして更に詳しい地名。
・3行目に出来るだけ詳しい場所の名前。ここでは「八ヶ谷緑地の草地」と書いてあります。
・4行目に日付。これは出来るだけ月と日が分かるように書きます。例は2010年4月3日ですが、時々これを「10/04/03」と書く人がいますが、これでは4月、3月、10月などの可能性が出てしまい、他の人が見たときに、正確な日付が把握できません。年月日の記載の順番は、国によって「年/月/日」や「月/日/年」など違います。どの国の人が見ても正確に分かる日付を記載しましょう。また、年を例えば「2012」年を「12」年と略して2ケタで記載する標本がありますが、これも避けるようにします。「12」と書いても、1912年なのか2012年なのか、はっきりしないからです。また、「平成」などといった年号も、将来海外で利用される可能性があることを考えると、避けるべきです。
・5行目は任意ですが、採集者を書きます。「leg.」とはラテン語の「legit」を略したもので、英語で言う「collected by XX (「XXによって採集」)」という意味です。英語のcollectedを略して「Coll.」と書く人もいますが、この場合Collection of XX (XXのコレクション)という意味とも捉えられますので、Coll.を使用する場合は「Coll. by」として、明確に意味を伝える必要があります。

<採集地が海外の場合>

USA: CALIFORNIA
San Diego Co.
3/4 miles west of Jacumba
February 14, 2011
leg. Kojiro Shiraiwa

海外の場合も、日本と同じ様に国名から更に細かい地名を書いておきます。

標本が将来どの様に使われるかを考えて、出来るだけ詳しい情報を書いておくのが好ましいといえます。今標本があなたの手元にあったとして、もしかすると将来知り合いや研究者に送ったりすることがあるかもしれません。ラベルは、出来れば外国の人が見ても分かるように、英語で書いておくと良いでしょう。英語に自信がない人は、せめて「JAPAN」とだけでも書いておきましょう。

         例:

標本箱には常にナフタリンなどの防虫・防かび剤を入れて、標本を食べる虫や、カビから守りましょう。


▲標本に虫がつくと、この写真のように食べかすが下に落ちます。
すぐに標本をチェックして、虫を取り除きましょう。
この標本にはカツオブシムシの幼虫がついていました。

こんな時は・・・

(1)首が曲がっている。

アゲハチョウなど頭部が横長の蝶は三角紙に入れておくと、頭部が曲がったままになってしまい、触角などが整えにくくなることがあります。

この様な場合は、展翅板の溝のところに硬く丸めた脱脂綿を入れたり、まち針を使って蝶の頭部を持ち上げるようにしましょう。

また、細い虫ピンを首に刺して頭をまっすぐ固定させる方法もあります。

(2)前翅の翅脈の根元が折れて、整形できない。

軟化展翅の時に時々経験しますが、基本的に翅(特に翅脈)が柔らかくなってしまったのと、胸部が十分に軟化できていないのが主な原因です。また、展翅版に刺した時の体の位置も影響します。頭が下がりすぎていたり、上がりすぎたりしている時も、翅の根元に無理な力がかかり、折れてしまいます。翅を少し乾かし、胸部の翅の根元を針でつついてやわらかくしてから、展翅版に体をまっすぐにして展翅しなおします。

翅がぐらぐらになるまで胸部をつつき壊した場合は、水で薄めた木工用ボンドを塗りこむ必要がありますが、ボンドを使用するのは、後の研究の邪魔になることがあるので避けた方がいいです。

(3)蝶の筋肉が硬直していて、整形しても翅が元の形に戻ろうとしてしまう。

軟化展翅で多いのですが、軟化不足が主な原因です。蝶が柔らかくなるまで軟化処理をするか、、針で胸部の筋肉をつつき壊します。

なお、翅を留め針で固定するときに、厚紙を5mm四方に切ったものと一緒に留めれば、翅が固定できます。それでも翅が戻ろうとする場合は、乱暴ですが、戻ろうとしている方向の出来るだけ反対側の翅脈に、0号の針を使って翅を刺し止めてしまいます。少し翅に穴があいてしまいますが、それほど目立ちません。ただし、この様な状態の標本を無理して展翅しても、留め針をはずした時に形が狂ってしまうことがほとんどです。しっかり軟化してから展翅するように気をつけましょう。

(4)前翅が変わった形をした、蝶の展翅。

蝶の種類によっては、変わった形の前翅があり、モンシロチョウなどと同じように展翅が出来ないものがあります。迷うことがあれば、図鑑などを参考にするのがよいでしょう。良く、「あれ?」と思う蝶の中には、アオスジアゲハや東南アジアのワモンチョウの仲間、南米のフクロウチョウの仲間などがあります。

(5)触角が折れてしまった。

触角が折れてしまった場合などは、あわてず、折れた触角を取っておきます。展翅が終わってから、触角を木工用ボンドなどでくっつけなおしましょう。展翅版からはずした後で接着してもやりやすいです。コツは、ボンドなどをつけすぎないようにすることです。特に触角の真ん中で折れてしまった場合は、ボンドをつけすぎると乾いた後にコブみたいになって醜くなりますので気を付けましょう。ボンドは水で半分くらいに薄めると、使いやすいです。


▲折れた触角にボンドをつける。

ポイント

・出来るだけ多くの蝶を、1つの展翅板で展翅するには。

蝶の前翅は種類によって形や大きさがまちまちで、展翅をするときどれだけ上がってくるか、予想がしにくいものが多くあります。このため、展翅をしていると、どうしても展翅版の蝶と蝶の間に大きな隙間が空いたりしてしまいます。なれてくれば、うまく蝶を詰めて、一つの展翅板により多くの蝶を展翅することが出来ますが、なれないと中々難しいものです。触角の長さを目安にすると間隔をとりやすいですが、これも種類によって触角の長さに特徴があります。

・蝶がくるくるまわる。

軟化展翅した蝶に多いのですが、標本にした後、蝶が虫ピンに固定されておらず、簡単にくるくると回ってしまうことがあります。蝶が簡単に針からはずせる状態になっています。そのまま標本箱に入れておくと、他の標本にあったって壊れたりしますので、虫ピンを使用して、腹部を固定します。木工用ボンドなどで蝶を針に固定するのも一つの方法です。

・展翅がうまくなるには

やはり沢山展翅をすると、それなりに腕も上がってきます。がんばって沢山展翅をしましょう。

 
▲私の昔作成した標本(左)と20年後に作成した標本(右)
どちらも同じ種類の蝶です。

他の展翅の方法。

・脱脂綿を使った展翅

薄く引いた脱脂綿の上に、蝶を乗せて形を整え、プラスチックフィルムなどで包む方法があります。よく、海外のおみやげ屋さんなどで見ることがありますが、蝶の裏側が見えなかったり、虫が付きやすかったりするので、学術的にはおすすめできません。

・糸を使った展翅

一部の海外の博物館では、展翅テープの代わりに糸を使用するところがあります。この展翅用法は少し乱雑で、一頭用の展翅板に蝶を固定し、留め針で翅をさし止め、糸で翅を縛る方法です。早いと2〜3分で一頭のスピードで展翅が出来ると言われています。

・ガラス板を使った展翅

展翅テープの代わりにガラスの板を使って展翅をすることもできます。ただし、ガラスが重く、割れたりしてしまうこともあり、場所もとります。

出来上がった標本が気に入らない

昔作った標本や、もらった標本の中にはあまり展翅の出来がよくないものがあります。これらの標本は軟化して再度展翅しなおすことが出来ます。 → 再展翅の方法

標本の管理

完成した標本は標本箱など密閉された箱などに保存します。箱の中は乾燥していることが重要です。また、標本を好んで食べる虫(カツオブシムシなど)がいますので、これら害虫を寄せ付けないために防虫剤を入れておきます。

カツオブシムシ ヒラタチャタテムシ
▲標本を食べてしまう、カツオブシムシの幼虫(左)とヒラタチャタテムシ(右)

一部の標本は体から油が染み出てくることがあります。そのような時は油染み取り作業を行います。→油染みの取り方


 

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