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ぷてろんワールド蝶の生態>擬態について:眼状紋

擬態について:眼状紋



▲目玉模様を持つヒメウラナミジャノメ(千葉県)

羽に眼状紋(目玉模様)をつけた蝶が多くいます。蝶が羽に眼状紋をつける理由を考えてみましょう。

天敵を脅かすのに使用する。

この説については、特に鳥がその天敵としてあげられます。鳥類は、色々な学者が研究して、眼状紋に対して極度の恐怖感を持つことが実験で証明されています。特に怖がられる模様は、フクロウやヘビなどのように、丸くて大きな目玉模様が多いようです。

一度テレビで紹介された実験に、こんなものがありました。まず、ビルの屋上に大きな鳥かごを設置します。そして、大きな風船に丸くて大きな目玉模様を2つ貼り付けたものを用意します(海ボウズのような姿になります)。ビルの影からこの風船をゆっくりと、目玉模様を鳥達に見せないように後ろ向きに、鳥かごの前まで上げます。この時、鳥達は平然としています。ところが、風船がゆっくりと回って、目玉模様が見えたとたん、鳥達はかごの中でパニック状態に陥ったのです。この様に鳥達にとっては眼状紋に対して恐怖感を持っているのです。

蝶の中に、この眼状紋を持つ種類がいくつかいます。眼状紋の代表は、なんと言っても東南アジアに生息するメダマチョウの仲間と、南米に生息するフクロウチョウの仲間でしょう。両者とも羽の裏面に大きな目玉模様をもっており、ジャングルの中でこの蝶を発見したときは、人間でさえ誰かに見つめられているような、変な気分になります。

餌を探している鳥が、この様な蝶を発見したときは、びっくりして逃げてしまうと言われています。


▲アルテミスメダマチョウとキオビフクロウチョウ

クモに効く眼状紋


▲後翅に赤い眼状紋と触角の様な尻尾を持つレダカラスシジミ(アメリカ、カリフォルニア州)

多くのシジミチョウの仲間は、後翅の裏面に黄色から赤色の目玉も様なものがあり、そこから尾状突起が出ています多くのシジミチョウは、草や木に静止している時、後翅をすり合わせるような行動して、尾状突起を触角のように見せます。この様な行動が、天敵に、動いている尾の方を頭と間違えさせて攻撃させると考えられています。

多くの本には鳥やトカゲが天敵の例として挙げられていますが、上の写真のレダカラスシジミはわずか1cmほどの小さな蝶です。このような小さな蝶の場合、鳥やトカゲは頭を狙わなくても、一口で蝶を食べてしまうことができます。では、どのような時に、この眼状紋と後翅をすり合わせる行動が役に立つのでしょうか?

フロリダ大学のスラコフ(Sourakov)氏は、この模様と行動が、クモ、特にハエトリグモに非常に効果的だということを実験で証明しました。ハエトリグモに13種類の異なる蝶を与えたところ、ハエトリグモは全ての蝶を1~4回の攻撃で頭部にかみつき、捕獲するのに成功しました。一方、2頭の眼状紋と尻尾を持つシジミチョウを与えたところ、クモはシジミチョウが動かす後翅の眼状紋にかみつき、1頭は14回も攻撃されたのにもかかわらず、最後まで捕獲されることはありませんでした。もう1頭も2回攻撃されましたが、同様に尻尾にかみつき、ハエトリグモはシジミチョウを捕えることはできませんでした。

この様に、シジミチョウの眼状紋と後翅のすり合わせ行動は、クモに対して大変有効であるということが言えます。もしかすると、カマキリの様な、ほかの肉食の昆虫に対しても有効なのかもしれません。

 メリッサミヤマシジミの後翅をすり合わせる様子(MPEG) → rubbing.mpg

暗がりで効く眼状紋


▲暗い場所を好む、ヒカゲチョウ(千葉県)

ジャノメチョウの仲間は、後翅に沢山の眼状紋がならんでいて、鳥が混乱して眼状紋のある後翅をつつくことが多いようです。実際、野外で採集されるジャノメチョウの仲間には、後翅が鳥についばまれた跡などが付いている事があります。

ウラジャノメ
▲ウラジャノメ

ところで、ジャノメチョウの多くは、上の写真のヒカゲチョウの様に、暗い場所に好んで生息しています。これは、実は眼状紋に関係しているという説があります。ウラジャノメを利用した実験で、異なる環境で鳥にウラジャノメを与えたところ、鳥が攻撃する部位が違うということが分かったからです。実験によると、

1. 紫外線を含む、明るい場所でウラジャノメを与えると、鳥はほとんど蝶の頭部や体を攻撃する。
2. 紫外線を含む、暗い場所でウラジャノメを与えると、鳥はほとんど蝶の羽の眼状紋を攻撃する。
3. 紫外線を含まない、暗い場所でウラジャノメを与えると、鳥はほとんど蝶の頭部や体を攻撃する。

このことから、眼状紋は鳥が活発に活動する、朝方や夕方などの暗い時間や、暗い森の中で威力を発揮すると考えられ、その為、ジャノメチョウの仲間の多くは暗い場所を好んで生息していると考えられます。なお、鳥も蝶と同じように、紫外線が見えることが分かっているので、上の様な結果になったと考えられています。


参考文献

  1. Sourakov, Andrei. (2013). Two heads are better than one: false head allows Calycopis cecrops (Lycaenidae) to escape predation by a Jumping Spider, Phidippus pulcherrimus (Salticidae). Journal of Natural History, DOI:10.1080/00222933.2012.759288.
  2. Oloffson, Martin, Adrian Vallin, Sven Jakobsson, and Christer Wiklund 2010. Marginal Eyespots on Butterfly Wings Deflect Bird Attacks Under Low Light Intensities with UV Wavelengths. PloS ONE (5) 5.e10798.
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