網を使った採集テクニック
◆花で吸蜜をしている蝶を採る
花を訪れている蝶は最も採りやすい状態にあります。花に来ている蝶を採るときは、花ごと掬ってしまうのが簡単です。ただし、蝶が来ている花を誰かが所有している場合、花ごと掬い採ってしまうのは好ましくありません。また、蜜の出る花ならば、また蝶が来るのでできれば同じ状態にしておきたいものです。この様な場合は、花に網の枠がさわる程度に網を振ります。蝶が花に夢中の場合は、網の底を持って、そっとかぶせるだけでも結構簡単に採れます。
◆飛んでいる蝶を採る
蝶の種類によっては、飛んでいる蝶を採るのは、慣れてくると簡単です。蝶の採り方として、最もスリリングな方法だと思いますし、それに、そばに見ている人たちが感心してくれます(以後、プロと呼ばれるようになったりしますよ(^^))。上手に採るには、とにかく数多くの蝶の飛び方を観察することが大切です。まっすぐ飛ぶ蝶、ふわふわ飛ぶ蝶、それぞれ蝶は飛び方にも特徴があります。慣れてくれば、飛び方で蝶の種類も分かるようになってきます。
飛んでいる蝶を捕まえるとき、多くの人は後ろから網で掬おうとしますが、基本的に、飛んでいる蝶は前方から掬うと採りやすい様です。アゲハの仲間のようにそれをひょいとかわしてしまう蝶もいますが、採れる確率は高いと思います。
もちろん、蝶が同じ場所をうろうろしているようであれば、飛んでいるところをわざわざ狙うことはありません。じっと待って、とまったところを採る方が逃げられる確率も少なくなります。
◆地面にとまっている蝶を採る
地面にとまっている蝶を採るには、3つの方法があります。一つは、えいっ!と網をかぶせる方法。もう一つは網で思いっきり掬い採る方法。そして最後に網の底を持って、そっとかぶせる方法。各方法は状況によって使い分ける必要があります。
まずは、タテハチョウやジャノメチョウなどに見られる、敏感な蝶の場合。そっと近づき、ギリギリまで網を近づけ、えいっ!と一気に網をかぶせます。蝶が網に入ったことを確認したら、すぐに網の底を持ち上げます。蝶は上へ上へと飛ぶことが多いので、これでほとんどの蝶は網の底へ入っていきますので、逃げられそうにないところまで上がってきたら、網を抑えて蝶を捕まえます。ただし、一部の蝶は頭がいいのか、網の底をあげても下の隙間から逃げようとすることがあります。そのような習性の蝶だと知ったら、すぐに手で網の枠のあちこちを押さえて隙間をなくしましょう。てきぱきとあちこち抑えながら、蝶を網の底へ誘導します。
地面にいる蝶に網をかぶせたとしても網の方へ行けないような場合や、蝶の習性によっては、網をかぶせるよりも、掬い採る方法が良い場合もあります。この場合、砂利などを一緒に掬ってしまうことがあります。蝶が砂利に埋もれてボロボロにならないように気をつけましょう。
アゲハやシロチョウの仲間などのような蝶が河原で吸水に熱中していたら、そっと近づいて網の底を持ちながら、網を蝶にそっとかぶせます。飛び立った蝶は、網の底の方へ上がっていきますので、そこで蝶を捕らえます。地面が濡れていたり汚れていたりしている場合は、網を地面につけなくても採ることが出来ます。
◆木の幹にとまっている蝶を採る
タテハチョウやジャノメチョウの仲間の一部は、木から出ている樹液に集まる種類がいます。カブトムシやスズメバチと一緒にいる風景は夏によく見かけることが出来ます。ところが、これを網で採るのは至難の業です。枝の張り方によりますが、周りに邪魔になる枝がなければ蝶の下に網をそっと近づけて、振り上げて採ります。蝶の上の方に枝があってこれが出来ない場合は、網を横に振って蝶を掬い採ります。横から掬い採るときは、網が幹にあたらない程度に。
トラップを使う採集テクニック
蝶を効率的に採る方法として、トラップを利用する方法があります。トラップは蝶を数多く集めるだけではなく、通常森の中にいてなかなか見られない種類を誘い出す効果があります。いずれのトラップも熱帯地区ではかなり高い効果を上げることが出来ます。
◆バナナトラップ
バナナをつぶして、焼酎などのアルコール類を混ぜます。しばらく置いて発酵させるのがベストですが、時間がないときなどはすぐに使用してもある程度効果があるようです。これらのトラップにはタテハチョウやジャノメチョウの仲間が集まってきます。
◆エビ・カニトラップ
エビやカニは野外に置いておくとすぐに腐敗し悪臭を放ち始めます。このトラップは東南アジアなどでフタオチョウ類が集まってくることが知られています。
◆おしっこトラップ
良く晴れた暑い日に河原などの少し湿った砂地におしっこやうん○をして待つと、シロチョウやタテハチョウなどが集まってくることがあります。これも良く晴れた暑い日が効果が上がるようです。
◆色紙・布トラップ
モンシロチョウはキャベツ畑に白い紙を置いておくとオスがよってくることがあります。南米のモルフォチョウやオーストラリア地区のオオルリアゲハも青色の紙に寄って来ることが知られています。また、砂地に色紙を並べておくと、吸水集団と間違えて蝶が集まってくることがあります。
網以外で採るテクニック
目の前に欲しい蝶が現れたとき、いつも網を持っているとは限りません。そんな時、あなたはどうしますか?
◆帽子で採る
帽子をかぶっているときは、帽子で採ってみましょう。飛んでいる蝶を採った経験はありませんが、地面にとまっている蝶を採ったことはあります。蝶をうまく帽子の中に入れたら、慌てずゆっくりと蝶を取り出しましょう。蝶を帽子から出すときに逃げられることが多いので気を付けましょう。
◆手で採る
じつは、このHPの中にいくつか私が手で採った蝶があります(チリのモンキチョウやギリシャのモンキチョウなど)。蝶が花で蜜を吸っているときや、朝起きたばかりで体温が上がっていないときなどは、手で採れる可能性が高くなります。そっと近づき、両手でかぶせるか、片手で押さえ込みます。