■春、近所の畑を見てみると白い蝶が飛んでいませんか?それがもしキャベツ畑なら、それはまず間違いなくモンシロチョウでしょう。せっかくすぐ近くで見つかる自然です。少し観察してみましょう。
▲メスのモンシロチョウ(右下)を追いかける3頭のオス
関東地方であれば、四月の桜が咲く頃からモンシロチョウは畑などで飛び始めます。モンシロチョウはどこでも普通に見られる種類と思う人が多いと思いますが、日本にいるモンシロチョウはcrucivora(くるーしぼーら)という東アジアに分布する亜種で、実はヨーロッパやアメリカで見られるモンシロチョウとはちょっと違います。
【日本のモンシロチョウ(亜種crucivora)】
春型のオス
春型のメス
【ヨーロッパやアメリカのモンシロチョウ(亜種rapae)】
春型のオス
春型のメス
オスとメスを見分けよう
▲モンシロチョウ(春型)のオス(左)とメス(右)
モンシロチョウが飛んでいると中々分かりにくいですが、よく見るとオスとメスの違いは明らかです。メスはオスにくらべて前翅の付け根が半分灰色になっています。慣れてくると、飛んでいても見分けられるようになります。
一日の行動を観察してみよう
モンシロチョウのオスの一日はとにかくメスを探すことです。畑で忙しそうに飛び回っているのはほとんどオスです。オスは蛹から羽化したメスを探して飛びますので、キャベツなどの葉の周りとかとにかく元気に飛び回ります。メスが出てくるとこのページの一番上の写真の様に複数のオスが追いかけたりします。
▲メスを見つけたオスがアプローチ
モンシロチョウのメスは蛹から羽化したら、オスと交尾をします。
▲交尾をしているモンシロチョウ。上がオス、下がメス。
そして、その後メスはひたすら卵をあちこちに産みます。
▲菜の花葉の裏に卵を産むモンシロチョウ(左) 人差し指と卵(右)
▲卵を拡大してみると、こんな感じです。
一生懸命卵を産んでいるモンシロチョウのメスですが、そんな時もオスが沢山近づいてきます。そんな時、交尾を済ませたメスならば、翅を広げ、おしりを上げて「お断り」のポーズをします(下写真)。そうするとオスはあきらめてまたメスを探しに飛び去ります。実はこの行動はシロチョウ科の蝶の多くに見られる共通の行動パターンです。
▲求愛するオス(右)に対して拒否のポーズをとるメス(左)
幼虫を探してみよう
では、キャベツを見てみましょう。畑に入るときは、その畑の所有者にちゃんと知らせてから入りましょう。
上のように、キャベツの葉に穴が開いていたら、幼虫が見つかる可能性が高いです。葉を丁寧に探していきましょう。実は上の右の写真の葉にも幼虫がいます。見つけられますか?丁度写真の真ん中らへんに左上を向いてとまっています。
葉の裏に、薄く葉をかじった後と、2齢幼虫と思われる幼虫を発見しました。更に探すと・・・
大きな幼虫がいました。後ろに茶色いものがあります。これは幼虫が脱皮したばかりで、その皮が残っているのです。脱皮したばかりの幼虫は体が固まっていないので、触らないほうが良いでしょう。さて、もう少し探してみましょう。
またいました。今度はりっぱな幼虫です。持ち帰って、タッパーにティッシュペーパーとキャベツの葉と一緒に入れておきました。すると次の日、幼虫は少し葉を食べてから、蓋にくっついてじっと動かなくなりました。
これは、前蛹といって蛹になる前の状態です。死んでいるのではありません。体の中は成虫になる為の準備で大変です。触らないでそっとしておきましょう。よーく観察してみましょう。
既に背中に糸が掛かっているのが見えますか?これは帯糸(たいし)と呼ばれるもので、蛹を支えるベルトの様なものです。
そして、夜に蛹になりました。蛹になったばかりであれば、中が少し透き通って見えます。中々無いチャンスですので、虫眼鏡やデジカメで拡大して観察しましょう。
翅の部分を拡大してみて見ましょう。この翅は実は幼虫の時から既に出来始めていたものです。この翅にある筋は翅脈(しみゃく)というもので、成虫になった蝶の翅を支える大事な部分です。また、蛹の時は、中に空気が通って周りの細胞に空気を与えてくれます。