■もっとも有名で人気のあるグループでしょう。大きく美麗種がたくさんいます。研究も盛んに行われているため、生態についても蝶の中ではかなり知られた存在となっています。
▲ニシトラフアゲハ(アメリカ合衆国、カリフォルニア州)
アゲハチョウ族は大きくて目立ち、研究されやすいだけに、色々な考え方が発展したグループといえます。ここにある全ての種をPapilio属として扱ったり、色々な属に分けたり、学者によって見解が違っています。
ここのホームページでは、2022年12月に「世界のアゲハチョウ図説」(中江, 2021)の分類を参考に、独自に整理しなおしました。「世界のアゲハチョウ図説」では類縁性(るいえんせい)を分かりやすくするため、ここにある種をすべてPapilio属として扱っていますが、ここのホームページではこれらの種をすべて「アゲハチョウ族」としてまとめてあるので、細かい属に分けて、より各グループ内の類縁性についてわかりやすくすることを重視しました。どちらが正しいというものではありません。
細かく属に分けたのは、多様性に気づきやすいと思ったからです。タスキアゲハ属(Heraclides)の ヒッパソンアゲハを見てみましょう。Papilio hyppasonだと、特に気にならない存在ですが、Heraclides hypasonとして見ると、Heraclides属の中でこの蝶がいかに特異かということに気づかされます。こういった「気づき」を与えられる分類がいいと考えました。
もう一つは他のグループの蝶の分類とのバランスです。ミイロタテハやミドリシジミ(ゼフィルス)の仲間は細かい属に分かれています。アゲハチョウだけひとまとめするのはバランスが取れていないと感じます。もしゼフィルスの属をアゲハチョウと同じように扱うのであれば、 日本のゼフィルスはほとんどがコロラドルリアカシジミ属(Hypaurotis)になることがDNAの解析で分かっています(Pelham, 私信)。
和名の「アゲハチョウ」は「揚羽蝶」 からきており、羽を揚げてとまることからきています。学名のPapilioはラテン語の「蝶」という意味です。英語ではSwallowtail(ツバメの尾)と呼ばれています。世界でおよそ221種類います。アゲハチョウ族は、以下のグループにまとめることが出来ます。
◇トラフキアゲハ*属(Alexanoria Koçak & Kemal, 2002)
◇アゲハチョウ属(Papilio Linnaeus, 1767)
◇ルリアゲハ*属(Nireopapilio Cotton & Nake, 2020)
◇ルリモンアゲハ属(Achillides Hübner, [1819])
◇オナシアゲハ*属(Princeps Hübner, [1807])
◇シロオビアゲハ属(Menelaides Hübner, [1819])
◇カザリアゲハ属(Eleppone Hancock, 1979)
◇オビモンアゲハ属(Araminta Moore, 1886)
◇パプアアゲハ属(Euchenor Igarashi, 1979)
◇ドルーリーオオアゲハ属(Druryia Aurivillius, 1881)
◇タスキアゲハ属(Heraclides Hübner, [1819])
◇マネシアゲハ属(Chilasa Moore, 1881)
◇クスノキアゲハ属(Pterourus Scopoli, 1777)
◇フトオアゲハ属(Agehana Matsumura, 1936)
◇キオビフトバネアゲハ属(Pyrrhosticta Butler, 1872)
◇トラフアゲハ属(Jasoniades Hübner, [1819])
Vane-Wright, R.I. & R. de Jong, 2003. The butterflies of Sulawesi: annotated checklist for a critical island fauna. Zool. Verh. 343
Nakae, Makoto, 2021. Papilionidae of the World. Roppon-Ashi Entomological Books, Tokyo. 336 pp.