幼虫の体:頭部
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▲アゲハチョウの終令幼虫の頭部
ちょっと分かりにくい幼虫の頭
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▲アゲハチョウの幼虫。どこが頭?
一部の蝶の幼虫の頭はちょっと分かりづらいです。というのも、上から見ると胸部の一部に隠れて見えなかったり、胸に目玉のような模様があったりと、ややこしい体つきになっているからです。シジミチョウなどは特に頭が見えにくい体つきをしています。
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▲横から見て、体をぐっと伸ばしてくれると、頭がどこにあるのか良く分かります
幼虫も成虫同様に頭部には目と触角と口があります。成虫と違うのは、目は左右に6個づつしかないこと、口は葉をかじるように強いあごに発達していることです。
一つ一つの目は単眼(たんがん)と呼ばれ、学者によっては6個まとめて複眼(ふくがん)と呼ぶ人もいます。意見が分かれるところですが、あまり良く見えないことは確かなようです。
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▲赤い矢印の先にあるのが一つ一つの単眼
触角は口の横から出ている一対の器官で、太い触角の先に細い糸がついているような形をしています。そのほかにも上の写真を見ると顔中がひげだらけのようになっているのがわかりますね?これらの毛もでたらめに生えているわけではなく、ちゃんと種類ごとに毛が生えている場所が決まっています。すべてではありませんが、この中のいくつかの毛も触角と同様に匂いを感じることが確認されています。生えている場所が決まっている上に、色々な蝶に共通しているので、一つ一つの毛には名前もつけられています。
吐糸管(としかん)
もっとも有名な糸を吐く幼虫といえば、シルク(絹)の原料となるカイコの幼虫です。カイコのように蝶の幼虫も種類によって程度は違いますが、糸を吐きます。糸を吐く器官は幼虫の口の下部にあり、吐糸管(としかん)と呼ばれています。この糸は幼虫の足場を固定するのに利用したり、蛹の時の土台や帯糸(たいし)、一部の蝶では簡単な繭(まゆ)を作るのに利用されます。
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▲口のすぐ下にある吐糸管から糸を出すアゲハチョウの幼虫
幼虫を飼育して観察していると、プラスチックケースの側面を幼虫が登るところを見ることが出来ます。ツルツルしている表面をよく垂直に登れるなぁ、と感心してしまいますが、よく見ると登っていった場所には細い「糸の道」が出来ていることが分かります。つまり、幼虫は脚を吸盤のように壁にくっつけて登ったのではなく、粘り気のある糸を壁にくっつけてそれを足場にして登っていたのです。自然の状態でも幼虫は草や木の葉にこのような糸の道をよく作ります。