卵の構造
蝶の卵は白、黄色、オレンジ色、茶色、緑など、色々な色があり、また、形も様々です。多くの場合、産み付けられた卵の色とある程度日にちのたった卵の色は違います。種類によっては卵の色によって、そこに産まれてからどれくらい日にちがたったか予想することも出来ます。
蝶の卵はニワトリの卵のように硬い殻で覆われています。この殻は水分の蒸発を防ぐ一方、酸素を通して呼吸も出来る優れものです。蝶の卵には気門(きもん)がありません。その代わりに撥水性(はっすいせい)のある空気が通る小さな穴が表面にたくさん開いています。その多さは卵の表面の約12%を占めるといい、その数も14,000個もあるとの報告もあります。この呼吸孔(こきゅうこう)は非常に効率的にできており、雨粒の中でもしばらく呼吸することができます。北米に生息するベニシジミの一種(Lycaena epixanthe)はクランベリー畑に生息していて、冬の間畑が水没しても、翌春まで水の中で生きることができます。卵などは体内の活動も少ないので、必要となる酸素はごく微量だからこなせる技なのです。
卵の殻はたんぱく質で出来ています。
さまざまな蝶の卵
蝶の卵といっても、黄色くて丸いだけではありません。色や形は様々ですが、グループによってある程度特徴がありますので、なれてくると卵を見ただけで、どのグループの蝶か分かるようになります。ここで、少しですが例を紹介しましょう。
◆セセリチョウの仲間
セセリチョウの卵は基本的には、丸くて下が平たい、おまんじゅうの形をしています。
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モフクミヤマセセリの卵
(Erynnnis funeralis) |
コツノセセリの卵
(Hylephila phileus) |
エンセイチャバネセセリの卵
(Panoquina errans) |
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カリフォルニアオオセセリの卵
(Agathymus stephensi) |
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◆アゲハチョウの仲間
アゲハチョウの卵は丸くて黄色いものが多く見られます。
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アゲハチョウの卵
(Papilio xuthus ) |
サバクキアゲハの卵
(Papilio poyxenes coloro) |
ニシトラフアゲハの卵
(Papilio rutulus) |
◆シロチョウの仲間
シロチョウの卵は形が縦に細長いのが特徴です。
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モンシロチョウの卵
(Pieris rapae crucivora ) |
イチマツシロチョウの卵
(Pontia protodice) |
カリフォルニアイヌモンキの卵
(Zerene eurydice) |
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ワタリオオキチョウの卵
(Phoebis sennae marcellina) |
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◆シジミチョウの仲間
シジミチョウの卵は平たくて、表面に色々な構造が見られます。基本的に形は平たく、上の真ん中には精孔(せいこう)、またはミクロパイルと呼ばれる凹んだ穴があるのが特徴です。 卵の表面には様々な突起や模様があります。
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アメリカムラサキベニシジミの卵
(Lycaena helloides) |
ウスズミヤジリシジミの卵
(Glaucopsyche piasus umbrossa) |
ソーンシジミの卵
(Callophrys thornei) |
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テトラカラスシジミの卵
(Satyrium tetra ) |
オナガベニシジミの卵
(Lycaena arota ) |
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◆シジミタテハの仲間
シジミタテハの卵はシジミチョウの卵とほとんど変わりません。シジミタテハが時々シジミチョウの仲間に入れられるのは、この様な特徴があるからです。
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ミヤマシラホシシジミタテハの卵
(Apodemia virgulti peninsularis) |
◆タテハチョウの仲間
タテハチョウの卵は様々です。産み方も一つだけであったり、縦に積み重ねられたりと色々とあります。
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キタテハの卵
(Polygonia c-aureum ) |
アメリカタテハモドキの卵
(Junonia coenia grisea) |
ヒョウモンドクチョウの卵
(Agraulis vanillae) |
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カリフォルニアヒメヒカゲの卵
(Coenonympha california) |
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蝶の卵を見つける
蝶の卵はその大きさが非常に小さいことから、なかなか見つけることが出来ませんが、庭にミカンやサンショウ、パセリ、ニンジン、三つ葉などがあればアゲハチョウやキアゲハのメスが飛んできて産卵するところを見ることが出来ます。
慣れてくると、野外で蝶の食草を見つけて卵を探すことができます。種類によって同じ種類の植物でも産んだり産まなかったりします。これも慣れてくると、「あそこには卵がありそうだな」とか、「あの草はおいしそうだな」と感が良くなってきます。蝶が沢山いて、側に食草があれば、卵を見つけるチャンスです。