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蝶の食事

■蝶たちは普段何を食べているのでしょう?ここでは、蝶たちの食事を紹介します。


成虫の食事

蝶が花に来て蜜を吸うというのは、おそらくほとんどの人が知っていることだと思います。でも、実際には蝶たちは種類によって色々なものを食べています。

蝶の成虫は、口がストロー状になっていて(成虫の体:頭部のページ参照)あらゆる液体を飲むことができます。これは花の蜜に限られたことではありません。次にあげるのは蝶の代表的な食事内容です。

花の蜜

代表的な蝶の食べ物で、蜜の出る花を庭に植えておけば、蝶が集まってきます。花の蜜と言っても、何でもいいというわけではなく、蝶の種類によってそれぞれ好みがあるようです。また、口吻の長さによって、蜜が吸える花の種類も限られてきます。例えば、アオスジアゲハの仲間は口吻が短いことで知られており、このような蝶たちは、ユリなど蜜が奥深くにある花の蜜は吸えません。

蝶を含む昆虫と花の関係は非常に長く、共に進化してきたといわれています。 →蝶と花の関係(予定)

花の蜜を吸うモンキチョウ
▲花の蜜を吸うモンキチョウ

樹液

カブトムシやクワガタムシを樹液のでている木で採集していると、昼間には色々な蝶がそこに集まっていることがあります。樹液に集まる日本の蝶ではルリタテハ、キタテハ、オオムラサキ、ゴマダラチョウ、サトキマダラヒカゲなどがよく見られます。オオムラサキは体も大きく、カナブン、スズメバチなどと縄張り争いをするところが見られます。

樹液を吸うゴマダラチョウとキタテハ
▲樹液を吸うキタテハ(左)とゴマダラチョウ(右)

腐った果実

秋、落ちて腐り始めたカキなどにキタテハやウラギンシジミが集まってきます。落ちた梨にもサトキマダラヒカゲなどが集まり、腐った果実は蝶を集める匂いを出します。熱帯では、バナナを利用したトラップで、森の深くに生息している蝶をおびき出す方法があります。

腐った果実に誘き寄せられたキタテハ
▲腐った梨にきたキタテハ

水、汗、尿など

夏、汗をかいたところに、時々蝶がやってきて腕や手にとまることがあります。よく見るとしきりに口を伸ばして何かを吸おうとしています。シジミチョウやタテハチョウの仲間に見られます。これは通常の食事というよりは、ナトリウムの摂取であるとの説があります。また、暑い夏の日に河原でおしっこなどをした時に、そこにキチョウやアゲハチョウの仲間が集まってくることがあります。これも同様にナトリウムを摂取するものだといわれ、しかもそのほとんどが新鮮なオスが集まってきます。 →蝶の行動:吸水

汗を吸う蝶
▲指から汗を吸うシジミチョウの一種

アブラムシの汁

ゴイシシジミは笹についているアブラムシのそばに卵を産みます。この時、アブラムシがアリに与えるお尻から出す甘い汁を飲んでいるところが観察されています。

幼虫の食事


▲トウワタの葉を食べるオオカバマダラの幼虫

成虫が花の蜜を吸う時、花の種類は特に限られません。これに対して、幼虫たちの食事はかなり限られています。これは、彼らの本能によって、特定の植物のみを食べるようになっているからです。アゲハチョウであれば、カラタチやミカンなどのミカン科の植物、モンシロチョウであればキャベツなどのアブラナ科の植物といった具合です。

なぜ特定の植物しか食べられないのか?

アゲハチョウの幼虫はミカンやカラタチの葉、モンシロチョウはキャベツなど、蝶は種類によって食べれる植物は限られています。なぜアゲハチョウの幼虫はキャベツを食べられないのでしょうか?

これは、長い歴史の間で、蝶と植物の「いたちごっこ」に近い進化が関連しているといわれています。すなわち、植物は蝶の幼虫を含む草食性昆虫類などに食べられないように、自分の生育には関係の無い二次代謝化学物質(にじたいしゃかがくぶっしつ)すなわち「毒」や「まずい成分」を合成し、それを利用して食べられない様にし、それに対して蝶はその化学物質に抵抗力をつけて対抗してきたというものです。キャベツがカラシ油という化学物質で食べられることを防ごうとしている一方、モンシロチョウはカラシ油に対応するようになったと言われています。

一度このような関係が出来上がると、蝶としては色々な植物にそれぞれ対応していくよりも、ある特定の植物に対応するほうが効率的になります(多くの植物を食べることが出来る種類もいますが)。モンシロチョウは、カラシ油に対応する一方、多くの他の植物の化学物質に対応しませんでしたし、アゲハチョウについてもミカン科の植物に含まれるフラボノイド酸などの化学物質に対応しましたが、カラシ油などに適応することはありませんでした。こういった理由により、アゲハチョウの幼虫は、カラシ油を含むアブラナ科の植物であるキャベツは食べられないわけです。

このように、ある種が特定の植物を食べる場合、その植物のことを食草(しょくそう)、または食樹(しょくじゅ)といいます。「モンシロチョウの食草はアブラナ科の植物」といった感じです。

母蝶が食草を見分ける方法

モンシロチョウの場合、母蝶は卵を産むときにアブラナ科の植物を選ばなければ、幼虫が間違った植物を食べて死んでしまうことになります(実際には食べずに餓死します)。この様な悲劇を避けるために、基本的に母蝶は自分たちの食草を探し当てて、その葉などに産卵します。モンシロチョウの母蝶はアブラナ科の植物をカラシ油の匂いを頼りに食草を探し、カラシ油配糖体(からしあぶらはいとうたい)に反応して産卵する事が確認されています。こういったメスの産卵を促す物質を産卵刺激物質(さんらんしげきぶっしつ)と呼びます。

いっぽう、幼虫についてもやはりカラシ油に反応し、葉を食べ始めることが知られています。これは、幼虫が間違って他の葉を間違えて食べないように適応したもので、自然の仕組みというものは実によく出来ているといわざるをえません。カラシ油を含ませたほうれん草をモンシロチョウの幼虫に与えたところ、これを食べ、しかも無事成虫になったという結果もあります。

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