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成虫の体:頭部(とうぶ)

■蝶の頭部はどの様な構造になっているのでしょうか。ここでは、頭部に集まっている器官についてそれぞれ紹介しています。なお、ここで使用されている電子顕微鏡写真は「教材としての走査型電子顕微鏡画像集」のホームページの画像をご協力により使用させていただいています。

ナガサキアゲハの頭部
▲ナガサキアゲハの頭部

頭部は3つの機能を果たしています。

1.体のコントロール
2.体を取りまく環境の情報収集
3.栄養分の摂取

体のコントロール

頭部には、他の生物同様「脳」があります。蝶に脳?と思いの方のいるかもしれませんが、蝶にもあるのです。もちろんほ乳類のような複雑な脳を持っているわけでもありませんし、あまり考えることは得意ではないようです。基本的には、本能的コントロールをする脳が入っています。ちなみに蝶の中まで、頭の良いと言われるものにドクチョウの仲間があげられています。

また、脳のほかに神経が集まってできた神経球(しんけいきゅう)が胸部と腹部にあります。胸部の神経球は主に脚と翅の動きを、腹部の神経球は消化器官や生殖器官を働かせる役目を担っています。

体を取りまく環境の情報収集

蝶は、自分の体がおかれている環境についての情報を頭部で集中的に集めています。といっても人間と同じで、基本的には「見る」事と、「嗅ぐ」事が基本的な情報収集方法です。

複眼(ふくがん)

アオスジアゲハの複眼
▲アオスジアゲハの目を拡大してみてみると・・・

蝶の「目」は一つひとつの個眼(こがん)が集まって、複眼(ふくがん)を作っています。一見、「目は二つ」と言いたくなりますが、左写真(モンシロチョウ)のように複眼を拡大すると、六角形の個眼が集まっているのが観察できます。アゲハチョウでは、一つの複眼でオスで約18,000個、メスで15,000個の個眼が集まっています。

蝶の場合、一般的にオスはメスを視覚で探すため個眼の数がメスより多くなっています。一方メスは、オスを探す必要がない代わりに、幼虫のエサとなる食草や、食樹を探す必要があるので、嗅覚に関する器官の方が発達しています。オスの方が個眼が多いのですが、一つ一つの個眼の大きさが小さくなっているのではありません。種類にもよりますが、オスとメスを捕まえてきて、複眼の大きさを比べてみると、オスの複眼の方が大きいことが分かります。

これだけ沢山の目があったら、沢山の映像が見えすぎて大変だろうと思いがちですが、実際には一つの映像として見えていると思われます。

複眼は頭部の大部分を占めていて、蝶が非常に広い範囲を見ることが出来ることがうかがえます。エノキタテハの一種(Asterocampa leilia)は、左右344度見えるとの研究結果があります。

偽瞳孔(ぎどうこう)

ゴマダラチョウの偽瞳孔
▲ゴマダラチョウの疑瞳孔

複眼の形態については色々なことが観察されます。個眼の大きさが違ったり、毛が間に生えていたり、観察していると種類によって色々な特徴があることが発見できます。また、種類によっては左写真(ゴマダラチョウ)のように、複眼に瞳のような模様が見られる「偽瞳孔(ぎどうこう)」を持つものもいます。

同じ偽瞳孔が見られる昆虫としては、バッタやカミキリの仲間が有名です。特にカマキリは、まるでこっちを見つめているような偽瞳孔を持っています。これら偽瞳孔は蝶が死んでしまうと、複眼が黒や茶色に変色して消えてしまいます。つまり、標本では見られない模様なのです。

カマキリの疑瞳孔
▲こちらをにらんでいる様なカマキリの疑瞳孔

個眼(こがん)

個眼について、もう少し詳しく見てみましょう。

個眼の大きさは蝶の種類によってさまざまですが、直径はおよそ15〜30ミクロン(μm、1ミクロンは1/1000mm)と私たちの肉眼ではほとんど見えません。この大きさは他の昆虫と比べても小さな部類に入ります。個眼は、小さければ小さいほどハッキリとものが見え、大きくなるとボケて見える特徴があります。一方個眼は小さくなればなるほど暗いところでは見えにくくなくなります。これは、私たちの目の瞳孔(どうこう)やカメラの絞り(しぼり)と同じしくみです。蝶は主に昼間明るい時間に活動するため、個眼が小さくても暗くならずよく見え、また、鮮明に見えていると考えられています。個眼の大きさは複眼の場所によって違うことが分かってきています。

個眼の並び方は良く見えるように工夫がされています。二つの個眼の軸の角度は「Δφ」で表されていますが(下図参考)、これが狭ければ狭いほど、すなわち平行に近いほど、鮮明に見えるとされています。このΔφは複眼の場所によって違い、蝶の場合、複眼の赤道にあたる部分がもっともこの角度が狭く、そこから上下に行くほど広がります。そして、赤道上でも前方がさらに狭く、後ろに行くと広くなります。このことから、蝶の複眼でもっとも鮮明に見える部分は前方の真ん中らへんということになります。Δφは3種類ほどの蝶を調べたところ、1〜3°ほどということが分かっていますが、これから色々な蝶も調べてみたら、何か新しい発見があるかもしれません。

 

<個眼のしくみ>

さて、ひとつひとつの個眼のしくみを見ていきましょう。

 


▲アゲハチョウの個眼の断面図(Boggs, Watt, and Enrlich, 2003より描く)
*これは概念図で、実際の長さなどは正確に書かれていません。

個眼は上図のように、一つ一つが筒状で、表面にキューティクルが層で出来ているa.角膜(かくまく)、すなわちレンズがついています。角膜の下にはb.円錐晶体(えんすいしょうたい)があり、そこで光は筒状になっている感桿(かんかん)またはラブドム(Rhabdom)へ誘導されます。感桿の周りには視細胞(しさいぼう)が9つほど並んでいます。アゲハチョウの場合、上図の1と2の視細胞は紫外線や青に反応し、3と4は緑に反応します。5〜9の視細胞は緑、または赤に反応します。視細胞の種類は個眼によって違い、例えば背中側(上側)にある個眼は紫から紫外線などにより反応したりします。

感桿はその周りにある4つの視細胞に光が行くように、4分されていてそれぞれの視細胞に向かって筋のようなものが入っています。そして、視細胞に入っている色素(c.紫色の色素、e.黄色や赤色の色素)によって光が吸収され、電気信号に変えられ脳まで伝わります。この仕組みから分かりますように、蝶は個眼一つ一つで像をとらえることは出来ません

さて、この目、人間と比べてみてどうなのでしょうか?人間の目は角膜を通して、目玉の奥に並んでいる視細胞(片方の目で約1億2千万個あります)に映像が映し出され、視細胞がその情報を電気信号に変換して約100万本の視神経にまとめられて脳に伝えています。つまり、私達の目はデジタルカメラでいう100万画素の解像度ということになります。一方アゲハチョウはオスで1万8000個の個眼ですから、1万8千画素ということになります。更に目が見えている範囲は蝶のほうがずっと広いわけですから、あまり画像ははっきりと見えていないことが分かります。

 

<動きを感じる神経は人間より敏感>

蝶が複雑な枝の間をひょいひょいよけながら飛んだり、捕中網を巧みに避けたりしているのを見ていると、「意外とよく見えている?」と感心してしまいます。自分の周りの環境を把握しながら飛行するには、その環境が良く見える必要があります。さて、動いている景色を良く見るためには、どのようなことが必要なのでしょうか?

一つは視細胞の処理能力があります。光が点滅している時、目はその間隔が短くなればなるほどずーっと光っているように見えます。例えば、アニメーションの場合、1秒間に16コマの連続した絵を見せれば、人間にはそれが動いているように見えます。今皆さんが見ているコンピューターのモニタなどは1秒間に50〜60回点滅を繰り返しています。このスピードを50〜60Hz(ヘルツ)というふうに表現します。モニタが一回点滅したとき、その残像が目に残っているうちに次の点滅が起こるため、私たちの目にはずーっと光っているように見えます。ところが、蝶の視細胞は150Hzまで処理することができ、コンピューターのモニタはチカチカと点滅しているように見えています。

蝶は私たちより、よりはっきりと動いている他の蝶や、葉や枝、網などが見えているのです。

 

<どんな色が見えるのか>

アゲハチョウで色がどれくらい見えるかテストしたところ、人間と変わらないほど色が見えていることが分かりました。蝶はさらに人間には見えない紫外線(しがいせん)まで見えることが分かっています。

人間の場合、見えている光の波長は370〜760nm(ナノメートル)といわれています。モンシロチョウでは紫外線となる340nmと380nmに反応する視細胞が確認されています。

 

触角(しょっかく)


▲モンシロチョウの触角の拡大写真

触角は蝶の「鼻」です。複眼の間から出ていて、よく見ると、いくつかの節で出来ていることが分かります。その節もいくつかの種類に分かれています。まず、根本の方は基節(きせつ)といい、この部分で触角を動かしたりしています。その次にずらりと並んで伸びている節はこう節(こうせつ)と呼びます。そして最後に臭いを感じ取る部分と思われる、べん節(べんせつ)があり、これが膨らんで触角をこん棒状にしています。

べん節は、蝶の種類によって10〜70ほどの節から出来ています。しかも、同じ種類でも節数が違うことが分かっており、今後の研究の対象としておもしろい課題といえます。ある蠅の一種は春に発生する個体はべん節が多く、夏に発生する個体は少ないことが分かっています。

また、上記写真から分かるとおり、触角は鱗粉に覆われています。ただし、臭いを感じ取ると思われる内側はこの鱗粉が無く、くぼみや溝があります。この鱗粉が無い部分を裸状部(らじょうぶ)といいます。


参考文献
Scott, James A.. 1986. The Butterflies of North America, a natural history and field guide. Stanford; Stanford University Press.本の情報のページへ

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