サイト内検索 powered by Google
ナビゲーションバー
ぷてろんワールド蝶の分類>タイプ標本について

タイプ標本について

■蝶の種類を同定するときに、その種の基準となる標本が世界で一つだけあります。ここではその標本について説明します。


基準となる標本:タイプ

 ある春の暖かい日、あなたはキャベツ畑で白い蝶を10頭採集しました。家に帰って図鑑で調べてみると、その白い蝶は「モンシロチョウ」であることが分かりました。ここまではよくある話ですね。

 さて、30年くらい経ったある日、あなたは昔採集した思い出のモンシロチョウの標本を久々に眺めていました。ところが、よく見るとモンシロチョウの中に薄い黄色い紋がある個体と、その紋が無い個体があることに気がつきました。もっと詳しく調べようと、交尾器の特徴を確認したところ、なんとモンシロチョウと思っていた標本の中に、実は違う種類がいることが分かりました。「新種だ!」と叫び、あなたはこれを学会に発表しようと思いました。そして色々な図鑑を取り出して、モンシロチョウの写真を確認してみると、今まで誰も気がつかなかったのか、困ったことに図鑑によって黄色い紋のあるモンシロチョウと紋が無いモンシロチョウ両方が載っています。

 さて問題です。黄色い紋があるモンシロチョウとその紋が無いモンシロチョウ、どちらが「モンシロチョウ」なのでしょう?

 上の例は作り話ですが、このようなことは実際にあることなのです。1種だと思っていたものが実は2種だった(逆の場合もありますが)。この場合、どちらの種が従来から知られていた種類で、どちらが新種なのかを確認しなければなりません。そのためには、その種類が新種として発表された時の資料を確認しなければなりません。新種を学会誌などで発表された記事のことを原記載(げんきさい)といいます。そしてそれを記載した人を命名者(めいめいしゃ)といいます。命名者は一人以上の場合もあります。原記載には、その蝶の特徴が細かく説明されています。その説明をよく読んで確認するのも手ですが、普通新種が記載されたときにはその基準となった標本が指定されていますので、その標本を確認するのがもっとも確実でしょう。この基準となる標本をタイプ標本と呼びます。上のお話を続ければ、あなたはある博物館を訪れ、そこに保管されているモンシロチョウのタイプ標本を確認します。そして、そのタイプ標本に黄色い紋があれば、黄色い紋があるモンシロチョウが「モンシロチョウ」で紋の無いモンシロチョウが新種であることが分かるわけです。

 このようにタイプ標本は基準となる標本ですから、大切に保管しておく必要があります。海外の場合、多くのタイプ標本は自然史博物館に保管されています。個人のコレクションにタイプ標本がある場合もありますが、一般の人が簡単に見られるように、タイプ標本は博物館など公共の施設に保管するのが好ましいといえます。

色々なタイプ標本の種類

一言にタイプ標本といっても、次のような種類があります。ここで説明するのは蝶をベースに説明してあります。植物や菌類の場合は少し内容が違う場合もありますので、気をつけてください。

ホロタイプ(HOLOTYPE)正基準標本(せいきじゅんひょうほん)。原記載の中で指定された一つの標本。その標本には通常「TYPE」や「HOLOTYPE」と書かれた赤いラベルが付けられています。単純に「タイプ」とよく呼ばれます。

アロタイプ(ALLOTYPE)別模式標本(べつもしきひょうほん)。ホロタイプと違う性別の標本。例えばオスのモンシロチョウがホロタイプとして指定されていたら、メスのモンシロチョウの標本をアロタイプとして指定できます。

シンタイプ(SYNTYPE):等価基準標本(とうかきじゅんひょうほん)。原記載の時に命名者がホロタイプを特に指定せず、複数の標本を使用した時、その全ての標本がシンタイプとされます。また、一つの標本しか指定できないのにも係わらず、複数の標本をホロタイプとして指定した場合も、これらの標本はすべてシンタイプとなります。

パラタイプ(PARATYPE)従基準標本(じゅうきじゅんひょうほん)。原記載の時に命名者が複数の標本を使用し、その内一つをホロタイプとして指定した場合、残りの標本はパラタイプとされます。

レクトタイプ(LECTOTYPE):選定基準標本(せんていきじゅんひょうほん)。原記載でホロタイプが指定されていなかったり、ホロタイプ標本が行方不明の場合、新しくシンタイプ、もしくはパラタイプの中からタイプ標本を指定します。この新しいタイプ標本をレクトタイプと呼びます。

ネオタイプ(NEOTYPE):新基準標本(しんきじゅんひょうほん)。ホロタイプもシンタイプもパラタイプもすべて行方不明になったとき、新しいタイプ標本をネオタイプとして指定します。この時、出来るだけその種の情報を集め、原記載された標本の採集地、もしくはそこに近い場所で採集された標本を慎重に選ぶ必要があります。


▲ロスアンゼルス郡自然史博物館にあるミヤマシラホシシジミタテハの新亜種のタイプ標本とそのラベル。


▲ロスアンゼルス郡自然史博物館にあるタカネキアゲハの新亜種のパラタイプ標本とそのラベル。


▲アメリカ自然史博物館にある、オナガベニシジミ(亜種virginiensis)のネオタイプ標本

サイトマップ | 使い方 | お問合せ
Copyright 1996-2015 Kojiro Shiraiwa. All Rights Reserved.