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実は、数ある採集地候補の中で、この場所を選んだ理由がある。かつてオレゴンからわざわざ南カリフォルニアに採集しに来たのも、実はあるシジミチョウを狙ってきたものであった。そのシジミチョウとはハルカゼシジミ(Philotes sonorensis)である。この蝶は、金属光沢のある水色に、前翅にオレンジの紋を持つ、シジミチョウにしてはちょっと風変わりな種類だ。おまけに分布も基本的には南カリフォルニアとその南のメキシコ・バハカリフォルニアに限られており、ここの地域独特の蝶なのである。
過去のチャレンジでは何とか小さなオスを2頭ほど採集することができた。ところが、博物館で見る個体と比べると、非常に小さな個体で、標本箱に申し訳なさそうに収まっている。また、後翅にもオレンジの紋が散らばるメスをまだ見たことがなかったのだ。ここに転勤になったのも何かの縁。頑張って見つけてみようと思ったのである。
基本的に今まで集めたハルカゼシジミの情報は以下のとおりである。
1.成虫は食草(Dudleya lanceolata)からあまり離れることはない。
2.食草は岩場に生えている。
3.発生時期は2〜4月。標高が高ければ7月ごろから発生している場所もある。
4.オスはメスを探すため、食草の近くの谷底を低く飛びながら一日中パトロールをする。
ロスアンゼルスの自然史博物館も、サンディエゴの自然史博物館も数十頭のハルカゼシジミに同じラベルがついているのを見たことがある。これはすなわち、タイミングと発生場所を当てさえすれば、多くのハルカゼシジミに会えることを示唆している。
谷を歩き始めて、すぐに図鑑で見たハルカゼシジミの食草を確認できた。以前は食草も見つけられなかったので、今回は大いに期待できそうだ。途中サラツマキチョウを採集しながら上り詰めていく。


▲ハルカゼシジミの食草、Dudleya lanceolata。思ったより小さい植物であった。

食草を見つけた時点で立ち止まってはいけない。先にはもっと生えているかもしれないからだ。ここで止まりたいのを我慢してさらに登っていく。突然、ヤマトシジミのような蝶が岩場を飛んでいくのを発見。ハルカゼシジミは光沢が強く、ネオンのごとく光り輝きながら飛翔するので意外と遠くからでも他のシジミチョウと判別ができる。鈍い光り方からして他のシジミチョウか?なんて思っているうちにサングラスをかけていたのを思い出した。これでは本当の色が見えない(^^;
しばらく歩いていくと、また飛んでいる個体を見つけた。難なくネットイン。やっぱりハルカゼシジミだ(^^)。

▲ちょっと傷ついているが、記念すべき第一号!

▲こんな場所にいました。
結局2時間ほど頑張ってみたが採集できたのは3頭で、メスは見ることはできなかった。まぁ、それでも目的の蝶に会えたこともあり、今回の採集は大満足である。本当はハルカゼシジミの生態写真を撮るつもりでいたが、ぜんぜん止まらないことと、風が飛ばされていってしまうので今回はあきらめてしまった。空に雲がかかり、風も出てきたので短い時間であったが、切り上げることとした。
帰り道に小さなツマキチョウが飛んでいるのが目に付いた。メスのようであり、風に飛ばされないように必死に下草に入ろうとして風に向かいながら飛んでいる。ネットインしてみると、なんとサバクツマキ(Anthocaris cethura)であった。これは思いがけない収穫。それにしても小さいこと!ハルカゼシジミと変わらないくらいの大きさだ。
さらに谷を下っていくとモンシロチョウのような個体。走って採集してみるとSpring Whiteと呼ばれるシロチョウの一種(Pontia sisymbrii)であった。これは、オレゴンでも採れなかった種。別名California Whiteと呼ばれるくらいだからここでは普通種なのであろうか?
結局今回の採集で採れた蝶たちは:

1.サラツマキチョウ(Anthocaris sara) 一番上の2頭(♂と♀)
2.サバクツマキチョウ(Anthocaris cethura) 一番下の1頭(♂)
3.カリフォルニアシロチョウ(Pontia sisymbrii) 上から二段目(♂)
4.ハルカゼシジミ(Philotes sonorensis) 下から二段目中央(♂)
5.蛾不明種1 下から二段目左
6.蛾不明種2 下から二段目右
昨年何も採れなかった事を考えれば、大満足なのであった。
久々の収穫のある採集であった。それにしても暖かいこと。帰りに寄った町の電光掲示板には「気温:32℃」とあった。少し狂っているにせよ、気温が高いのは確か。こんな場所でこれからどのような蝶たちに会えるか、できるだけ足を運んで記録していきたいと思う。(2003年2月)■


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