メタリフェルの飼育 v1.2

メタリフェルホソアカクワガタは、飼い方も優しく初心者向けのクワガタとも言えます。見かけによらず、短期間で卵から成虫になるため、飼育を楽しめる種類です。


飼育用具を揃える

飼育ケース
市販されているプラスチック製のもので十分。メタリフェルは力は弱く、ふたをこじ開けて脱走するようなことはない。飼育ケースは1ペアであれば、小プラケースでも飼うことができる。筆者は20センチ×15センチ×7センチのタッパーで1ペア飼育し、特に問題はなかったが、場所や予算が許すのであれば大きめのケースを用意したい。飼育ケースの設置場所としては、なるべく日陰の涼しい場所におき、湿度は高めに保つこと。飼育ケースをおく場所は、当然ながら直射日光が当たるところにおいてはいけない。

マット
これも市販されているクヌギマットで十分であり、高級なマットは必要がない。他のクワガタを飼っているときは、幼虫の食べ残しマットでも良く、なかなか経済的なクワガタだ。

ゼリー
大食いではないので、飼育ケース内を清潔に保つためにも、少しずつ与えてやると良い。ペアリングさせるにはこの様な食事の場を作ってやると効果がある。食事中にオスがメスを襲えるように、ゼリー周りは広くあけた方が良い。また、小さなメスなどは、まれにこのゼリーで溺れることがあり、容器のまま置いておくより、止まり木に小さな穴をあけて、そこにゼリーを入れておくのが無難である。

飼い方

成虫
メタリフェルの飼い方は、基本的に日本のノコギリクワガタなどと同じであり、飼育ケースの中に深さ三分の一ほどマットを敷き詰め、止まり木を入れておくだけでよい。
 オスは大きな大顎を持つため、うまくマットの中に潜ることができず、枝などに止まっているので観察がたやすい。オスはメスを探して歩き回り、転倒することが多々ある。また、驚くと脚を縮めて枝から落ちることもあり、そのまま起きあがれないと体力を消耗し、衰弱して死んでしまう。メタリフェルは転倒してから短い時間で死んでしまうから要注意だ。転倒死は現在のところ死亡原因ナンバーワンであるから、枝などといった「起きあがりグッズ」は多めに入れておくと良い。また、体をさらしているストレスを和らげるためにも、オスが休息できるような隙間を造ってやると、オスの動きが少なくなり、この様な事故が少なくなる。
 一方メスは環境の変化などに敏感らしく、しばらくマットに潜りっぱなしということがある。しつこくオスに追いかけられるのを嫌って潜るのだという説もあるので、気になるときは別々のケースに移しておく。メスについてはあまり刺激を与えないのが卵を回収するこつかもしれない。
 一つのケース内で飼育できるメタリフェルはそのケースの大きさにもよるが、オスを複数入れるのは好ましくない。大顎の挟む力は一見弱いようだが、テコの原理で内歯で挟まれると結構強い。狭い場所では、他の雄を穴だらけにして☆にしてしまうので注意が必要だ。ストレスを最低限にするためにも、1ケース1ペアが好ましい。
 成虫の食べ物は昆虫ゼリーなどで十分であり、メスについても特にたんぱく質のものを与える必要もない。基本的には、メスは1週間に一度マットから出てきてゼリーを食べる、という行動パターンが見られる。
 また、メタリフェルは飛ぶのが得意。ふたを開けてエサを交換などするときは逃げられないように注意しよう。

累代飼育を目指す

採卵
メタリフェルは他のクワガタに比べても卵を産ませやすい種類である。メスがその気になれば20〜30個ほど卵を回収することができる。

セット
メタリフェルはマット産みといわれ、オオクワガタのように産卵木をかじって、そこに産卵するということあるが、あまりない。と、言うか、水によく浸した非常に柔らかい産卵木には、ぼこぼこに穴をあけて卵を産んでいるときがある。メスが潜るときの足場、または産卵するとき脚を踏ん張る?場所がいるのか、この木がないとなかなか産まないことが多い。産卵木はカビの発生を抑えるためにも、マットに上部を残して埋めてしまうのが無難である。
 マットは微粒マットを選び、湿度を高めにし、下の方が泥状寸前になるほど水を加えると結果がいいようである。水は加えすぎるとマットからガスが発生して、クワガタを酸欠させたりするので、気を付けたい。微粒マットは通常のマットをミキサーで砕いたものでも良い。かなり発酵が進んだものが好まれる傾向にあり、ほとんど黒くなったマットなどが特によく、場合によっては、オオクワガタなど他のクワガタの幼虫を育てた、使用済みマットを利用することもできる。マットはケースの中に硬く詰めておくと採卵率が高くなる。また、温度は20〜25℃くらいに保ち、これより暑すぎても寒すぎてもよろしくない。よって、野外などに飼育ケースをおく場合は春から秋がよく、冬場などは温室が必要となる。


成虫を入れて数週間が経つと、飼育ケースのそこに白い1ミリくらいの卵が見られる。時にはマットの中間部分に産むことがあり、この時は飼育ケースの外からは見えないが、マットを掘ると出てくるので確認することができる。数週間経っても産卵の様子がなければ、使用しているマットが気に入らない可能性があるので変えてみる。マットの湿度を調整したり、発酵度の違うものを使用したり、色々と試してどのマットに良く産卵するか観察するのもおもしろい。
 卵を取り出してしまうと死亡率が高くなるので、産卵している様子であれば、飼育ケースをそっとしておく方が無難である。

幼虫
産卵を確認して約1〜2ヶ月ぐらいすると、幼虫が飼育ケースの底に見えてくる。メタリフェルの産卵を確認するのはこの方法が最も安全で、卵を掘り起こして確認するより、幼虫がこの様にでてくるのを待った方が生存率も高い。幼虫は見る見るうちに大きくなっていくので、小さいケースなどで飼育している場合は共食いなどを避けるために別のケースに移すのがよい。
 幼虫が必要とするマットの量はオスとメスによって異なるため、早めに幼虫の性別を調べ、それぞれ適正の容器で育てると効率がよい。孵化した幼虫はその後約半年で成虫になり、小型のオスやメスほどより早く成虫になる傾向にある。

大きな個体を目指して
オオクワガタなどでは、菌糸瓶を使用すると大型の個体が出ることで有名だが、メタリフェルについてはむしろ死亡率が高い割には大型の固体がでないので使用は避けた方がよい。大型の個体を目指すのであれば、次の方法をとってみよう。

添加マット
マットに小麦粉などを混ぜて、発酵させる方法。マットに添加するものとしては、今のところ次のようなものが代表的であるが、自分で色々と試してみるのもおもしろいであろう。

小麦粉
普通に料理に使われる小麦粉をマットに10%〜20%ほど添加し、水分を加えよく混ぜた後に暖かい場所におき、発酵を促す。発酵が始まったマットは温度が上がり始めるので、時々かき混ぜる。マットの色が黒っぽくなり、温度落ちれば完成。
ふすま
ふすまマットの効果については、まだ情報不足ではあるが、大きな個体が出ている例もあり、期待できるであろう。ふすまマットの作り方は基本的に小麦添加と同じである。

材飼育
材飼育をすると、大きな個体を簡単に得ることができるといわれている。材飼育でのポイントは、いかに幼虫を材の中に留めさせるかである。通常材飼育の場合、材に幼虫を入れて、その木をマットに埋め込むわけだが、しばらくすると材からマットに出てきてしまう。これを防ぐには材の湿度を上げたり、埋め込みマットに針葉樹マットを使用したりする工夫が必要となる。

前蛹
蛹になる時期が近づくと、幼虫は蛹室を作り始める。蛹室は「まゆ」みたいなもので、幼虫が体をくねくねさせて部屋を造りはじめる。幼虫の体が縮んで茶色くなり、動かなくなったら、できるだけ刺激を与えないようにそっとしておく。前蛹は大変デリケートな時期。触ったりすると死亡するのでここは我慢。前蛹の期間はオスで約3週間、メスで約2週間となる。


前蛹が脱皮をして真っ白な蛹が出てくるが、この時も触らずにおいておくのがよい。蛹は幼虫時代の体が体内で液状化し、成虫の体へと変化する期間である。しばらくすると、体の色も茶色になり始め、約2〜3週間ほどでいよいよ羽化が始まる。

 
羽化
蛹に色が付き、脚がぴくぴくし始めたら、羽化の時期が迫ってきている証拠。容器をあまり動かさないようにする。羽化の様子を撮影することができたので「メタリフェルの羽化」で紹介しておく。羽化した成虫は、2週間ほどで体が固まるまでそっとしておく。この間に取り出しても、まともに動けない。

ライフサイクル
メタリフェルは、その大きさからは想像できないほどの早さで成長をし、卵から孵化した幼虫はわずか半年で成虫になることができる。小さなメスなど4〜6ヶ月ほどで成虫になる場合がある。一方大きなオスは半年以上かかるため、この「ずれ」が累代飼育を難しくしている場合がある。つまり、小さなメスが早く羽化して時間が経ち、瀕死の状態の頃にやっと大型のオスが羽化をするといった感じである。成虫の寿命は約6ヶ月で長生きのものは8ヶ月ほど生きた個体もいる。このズレは1〜6ヶ月あるわけで、幼虫1ペアから累代飼育を目指すのであれば、次のような方法を試してみると良い。
1.幼虫の内にオスメスの区別をしておき、オスは高めの温度で、メスは低めの温度で飼育をする。こうすることによって羽化時期のずれを小さくする。この場合、オスが小さくなることを留意したい。
2.新しくペアを購入したり、知人などと交換をしながら累代を続けていく。この場合累代飼育の問題である生殖能力の低下を防ぐことができるメリットがある。

メタリフェルは一匹一匹がそれぞれ独特の光沢を持つので、羽化してきたメタリフェルを見るのはとても楽しいことです。ブルーの個体からグリーン、銅色など体の色を決めるメカニズムはまだ解明されておらず、今後沢山飼育をしていけば、この辺の仕組みが見えてくるかもしれません。




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