カニタマオシコガネ またもやフンチュウの紹介・・・(笑)
前回紹介したニジダイコクコガネ類と違い、今度は糞球を転がす本当の「フンコロガシ」の仲間。上の写真を見て、学研の「世界の甲虫」図鑑に載っているのを思いだした人もいるであろう。実は私も実物の標本をもらったときは、「あ、あいつだ」なんて思い出したのだが、これほど標本写真と現物のイメージが違うとは思ってもみなかった。
本種はアルゼンチン産の標本で、前回紹介したテイオウニジダイコクコガネと分布が重なっている。実はアルゼンチンのパンパス地方は世界でも有数のフンチュウの楽園なのだ。ここの地方に生息するフンチュウは多種にわたり、正直言って私もいったいどれだけの種類がいるのか見当がつかない。ただ、この地方から送られてくるフンチュウ類はいずれも私のコレクション欲を掻き立てるだけの珍種・美麗種が揃っている。
さて、美麗種と言うより、珍種といった方が似合うこのカニタマオシコガネ。図鑑の図では確かに変わった形をしたフンコロガシと思っていたのだが、実際に手に取って見るとその複雑奇怪な前胸に目が釘付けになった。ダーウィンは南米チリのチリークワガタ(Chiasognathus granti)を見て「過剰適応」なる表現をしたが、カニガタタマオシコガネも負けてはいない。他の甲虫に比べても掘ったりもぐったりするこの虫が、なぜにこんな複雑な角を胸に持つのか、考えていると色々と説が出てきそうだ。どう見てもこれらの角は「じゃま」にしか見えない。それをあえてこういう形に進化したからには、何か隠れた理由というか秘密がありそうでわくわくしてくる。
この複雑な胸の形を文章で伝えることは容易ではない。写真があれば簡単に説明できるであろうと思ったが、これが実は甘かった。上の写真を見て正確に角の形がわかる人は少ないであろう。というわけで、色々なアングルから見てみよう。
まずは横から。胸に3セクションに分かれた角があるのが分かる。頭部の先にも突起がある。そしてチャームポイントの丸い腹部(^^)。
後ろから。前胸部がえぐれ方がわかる。カブトムシの角のように見える角は前胸部で一番前の角。二番目と三番目は左右対になっている。
この角度が一番分かりやすい角度であろうか。
カニタマオシコガネはこれ以外にも数種が確認されているようで、標本商のリストなどにも「カニタマオシコガネの一種」といった感じで載っていることがある。そして、それもこいつ以上に複雑な形をしているのであろうかと、今日も発注書を書いている自分がいるのである。