サイト内検索 powered by Google
ナビゲーションバー
ぷてろんワールド蝶の分類>新種記載の方法

新種記載の方法

■ここでは、新種を発表する時の例を見てみます。


新種をみつけるには?

 自分が採集した蝶、または、買ったりもらったりして手に入れた蝶が、新種であるかどうかを調べるのは、なかなか大変なことです。というのも、まず最初にしなければならないことは、その蝶が本当に既に新種として名前が付けられていないかどうか(これを記載(きさい)といいいます)を確認する必要があるからです。この確認する作業としては、次に様なステップを踏む必要があります。

1.図鑑で調べる。

まず最初のステップとしては、その蝶が図鑑に載っていないかどうかを確認します。図鑑といっても様々な図鑑がありますので、どの図鑑を調べるかも考えなければなりません。日本であれば、図鑑が充実していますので、日本産蝶類標準図鑑などで、調べる事が出来ます。海外であれば、出来ればその地域を網羅している図鑑をみてみます。無い場合は、ザイツの世界の大型鱗翅類という図鑑などを探して調べることが必要になります。

2.その蝶の仲間に同じ蝶がいないか確認する。

新種を記載する時には、その種がどの科で、どの辺の属に分類されるか検討をつけておくことが必要です。もっともまったく新しい属という可能性もあります。調べる時は、図鑑だけではなく、その地域に生息する蝶をリストに纏めたチェックリストというものがあれば、それを利用することも出来ます。例えばモンシロチョウの仲間であれば、Pieris属、またはArtogeia属のリストを入手し、その種を一つ一つ確認することも必要です。この確認作業でとても似ている種類の場合、文献だけでは分からない時がありますので、その時はその種が記載された時の文献(これをよく原記載(げんきさい)といいます)を確認したり、タイプ標本を見に行ったり、タイプが採集された場所に行って、その蝶を採集して確認してみることも必要となる場合があります。

3.専門家に相談する。

蝶はプロ、アマチュアを含め沢山の研究者がいます。多くの場合、ある特定のグループや地域に絞って研究している人が多いので、そのような人を探して、相談することも必要です。

新種を記載しよう

さぁ、色々調べて、新種だと確信したら、その蝶を新種として発表することになります。この発表は学会誌で発表する必要があります。新しい種類の記載は世界の財産となりますので、海外の人でも入手できる学会誌である事が重要です。そして、その記載は日本語でも書いても良いですが、世界中の人が見られるように英語で記載することが望ましいといえます。

ここでは、1998年にアメリカ合衆国で記載された、シジミタテハの新亜種、Apodemia mormo peninsularisの記載を具体的に見てみましょう。各ページの画像はSystematics of Western North American Butterflies(北アメリカ西部の蝶の分類)から引用しています。

最初に分かりやすいタイトルをつけ、命名者となる記載者(この例では3人)、住所、そして要約(abstract)を書きます。

1. INTRODUCTION(最初に)

ここでは、ここで記載する蝶の説明をしています。この記載ではモルモンシジミタテハ(Apodemia mormo) が今までどのように研究されてきたかが簡単に説明されています。この次に複数の新亜種の記載が始まっていますが、ここではpeninsularis亜種の記載まで飛んでみましょう。

2.新種記載

ここで、この新亜種の記載がスタートします。新しい名前の後に、それが新種(新亜種)であることが分かるように、名前の後ろにsp. novaや、ここにあるようにnew ssp.と書きます。spはspecies(種)の略、sspはsubspecies(亜種)という意味で、spやsspの前に新しいという意味のnewと書くか、後ろにラテン語の新しいという意味のnovaを書きます。

その次に、その新しい種類について大きさや翅の模様など出来るだけ詳しく特徴を記載します。ここでは、オスの標本をホロタイプとして指定して、メスをアロタイプとして指定しいる事が分かります。このようにホロタイプを指定することは大変重要なことです。

3.TYPES(タイプ標本について)

ここで、タイプ標本についているラベルの内容が記載されています。

4.DEPOSITION OF TYPES (タイプ標本のある場所)

ここで、タイプ標本がどこで見られるかを記載しています。これは新種を記載するときに、必ず書かなければならない項目です。後々研究者があなたのようにタイプ標本を調べたいと思った時、どこに行けばタイプ標本が見られるかが分かります。タイプ標本は世界の財産ですので、世界中の誰もが見られるよう、 博物館などの公共施設に収めるべきです。個人で所有しておいて、誰にも見せないというのはもってのほかです。

5.TYPE LOCALITY(タイプが採集された場所)

ここでは、タイプ標本が採集された場所はどこか、そしてその場所がどんな環境なのかを簡単に説明しています。

6.DISTRIBUTION AND PHENOLOGY(分布と特徴)

記載した種の分布と食草、発生回数について説明があります。この様にその種を良く調べてから記載するのが理想ですが、とても珍しい種類などについてはこれを省略する場合があります。

7.ETYMOLOGY(命名の語源)

ここでは、peninsularisという新しい名前を与えましたが、そのpeninsularisの意味を説明しています。これも記録を残しておく事が大切です。

8.DIAGNOSIS AND DISCUSSION

この新しい種やその仲間などについての解説をしています。

さて、この記載文ではこの後、その他の新亜種についても記載されているので、記載の最後のほうまで飛びましょう。

9.ACKNOWLEDGEMENT(謝辞)

ここでは、この記載をするにあたって協力してくれた人たちなどにお礼を述べています。

10.LITERATURE CITED(参考文献)

最後にこの記載で引用した本や論文などをここでリストアップします。

そして最後に、新種の写真を入れます。写真を入れる場所は本文の途中でも構いませんが、これは編集者次第となります。この記載では残念ながら白黒写真で印刷の質が悪く、細かい翅の模様などが良く見えません。

上の図の13〜16がpeninsularisになります。さて、この記載どおりにロスアンゼルス群の自然史博物館に予約を入れて、標本室に行くと、下のようにホロタイプの標本を確認できました。


▲ロスアンゼルス郡自然史博物館にあるミヤマシラホシシジミタテハの新亜種のタイプ標本とそのラベル。

新種の記載はこれから蝶を研究する人たちの為にも、上のように出来るだけ詳しく書くことが大切です。

サイトマップ | 使い方 | お問合せ
Copyright 1996-2015 Kojiro Shiraiwa. All Rights Reserved.