メタリフェルホソアカクワガタ
Cyclommatus metallifer (Boisduval, 1835)

原種記載:

Lucanus metallier Boisduval 1835, Voy. L'Astrolabe, Coleopt. 2: 236, Pl.6, fig.20♂(Celebes)
当初、Lucanus属として記載されているが、これは当時全てのクワガタムシがこの属名で記載されていたからである。ホソアカクワガタ属(Cyclommatusは東南アジアを中心に約40種類ほど確認されている。学名のCyclommatus(キクロマトス)はギリシャ語で「丸い目」という意味。この属のクワガタの特徴から由来する。種名のmetallifer(メタリフェル)は「金属的な」という意味で、本種が金属的光沢を持っている事からきている。

体  長:

♂ 24.0〜92.0mm
♀ 20.0〜28.3mm

体長は、大顎の先端からお尻の先っちょまでの長さであり、ペレン島に産するfinae亜種が最も大きくなる傾向にある。

色  彩:

オスは地域によって色彩に変異が認められる。一般的には、上翅、まれに前背胸に金属的光沢を持ち、銅色から金銅色をしている。ペレン島の個体は暗青銅色をしており、中には青く金属的に輝くものもいる。

メスは金属的光沢が弱く、黒色から褐色、又は赤茶色。

特  徴:

大型の個体でなんと言っても目立つのは、その体長よりも長い大顎にある。細くて長い大顎には、半分くらいのところに内側やや前方を向いた一本の内歯があり、そこより基部側に小さな内歯が1〜6本並んでいる。この小さな内歯は左右対称でない。一方大顎の先端は前方内側にとがっており、先より基部の方へ12前後の小さな内歯がノコギリ状に並ぶ。このノコギリ状の内歯で一番基部側の一本は若干大きくなり前方を向いている。最小型の個体では、このノコギリ状の歯だけが残り、他の内歯は見られない。

 頭部は大顎に伴い発達しており、大型の個体では幅は長さの倍になる。前方の幅は広く後方で狭まっており、前方両角は強くとがる。複眼は半球状に出ており、一部のクワガタに見られるように骨格によって覆われることはない。触角は複眼前方より出ており、長い。頭楯はなめらかな三角形。

分  布:

かつては、セレベス(スラウェシ)島の特産と考えられていたが、近年新産地が見つかっており、セレベス島を中心として、サンギール島、ペレン島、スーラ諸島、バチャン島、ハルマヘラ島、モロタイ島などに分布することが知られている。

生  態:

観察例は少ないが、セレベス島での観察によると、本種が生息しているのは標高の低い土地で、木も低く明るい環境に生息している。午前中に多くの個体数が見られ、ツバキ科の低木の若芽に多数つがいで見られるという。細い枝をすばやく上り下りでき、メスなどが新芽の基部を傷つけ、頭部をつっこみ汁を吸う。このメスを警護するようにオスが覆い被さっており、鈴木(1996)は交尾したオスが、メスが他のオスと交尾をしないように警護している行動と予測している。また、本種はノボタン科の花にも同様に集まり、樹液にも集まる。

 飼育状態でも見られる行動として、よく飛翔するということがある。これは、ニューギニアのパプアキンイロクワガタのように、本種が若芽や花を探し飛び回っていることが予想される。また、オスは触ろうとすると最初は威嚇するが、触れたとたん足を縮めて枝から落ちる。オスはマットに潜ることは殆ど無く、枝に静止していることが多い。一方メスは餌を一週間に一度の頻度で摂取するとき以外はマットに潜り込んでいる。

 飼育下で微粒マットにメスは20〜30程卵を産み、孵化した幼虫はその後約半年で成虫になり、小型のオスやメスほどより早く成虫になる傾向にある。前蛹の期間はオスで約3週間、メスで2週間となる。蛹の羽化についてはオスメス共に2週間ほどと短い。

亜  種:

地域変異を基本とした、5亜種が記載されている。

Cyclommatus metallifer metallifer (Boisduval, 1835)
分布:セレベス
上記写真のように、銅色のものが多く、全亜種の中でも最も大顎が太く、また、個体によっては頭部も
幅が広くなる。

Cyclommatus metallifer sangirensis Mizunuma & Nagai, 1991
分布:サンギール島

Cyclommatus metallifer finae Mizunuma & Nagai, 1991
分布:ペレン島
亜種の中で最も大きくなり、また、輝きも強い。一部では青銅色している個体や
上写真のように緑っぽくなるこたいもいる。大顎はどちらかというと、細い。

Cyclommatus metallifer isogai Mizunuma & Nagai, 1991
分布:スーラ諸島

Cyclommatus metallifer otanii Mizunuma & Nagai, 1991
分布:モロタイ島




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