そいつは、ドルクスの様な奴であった。そんなの常識と言われてしまえばそれまでだが、私はこんなところでドルクス系のクワに会えたことにぶったまげてしまった。北半球のアジア、ヨーロッパ、ハワイ位しか存在しないと思っていたドルクス系クワが目の前に十数匹いる。チリのクワガタはコガシラクワガタみたいな奴らだけと思っていた。日本に帰ってから調べたら、こいつは立派な一属一種のApterodorcus bacchusというチリ特産のクワガタなのだそうだ。和名では「クロヒョウタンクワガタ」または、「チリハネナシクワガタ」なのだそうだが、ヒョウタンとかハネナシでは何かかっこわるいので、ドルクスの仲間という意味でドルクスと呼ばせていただく。(真正ドルクスファンの方々、申し訳ない!)


まさかのドルクス。左の♂は、セルジオ氏も欲しがる3cm級の大型のもの。

また、私はそのドルクスがうごめく中に、更にあるものを発見した。非常に小さく、ケシキスイらしい黒い物体。取り出してみると、何とそいつもクワガタであったのだ。サメハダクワガタの仲間だ。


かわいい・・・

一人で興奮していると、彼女たちが樹液が出ている場所を案内すると言ってくれた。そしてまた山を登るのであった。あんなにどう猛そうだった犬達が、しっぽを振りながらついてくる。このあたりは、すばらしい原生林が広がっている。大きな木では、直径3mほどあり、高さは見た目だけだが、20m級のものまである。地面は非常に柔らかく、何年も降り積もった落葉が肥沃な大地を作り出している感じだ。途中で朽ち木があちこち散漫しているので、それをひっくり返してみる。その中から、クワガタの食痕があるものがひとつあった。すでに古く、中にはムカデがいただけであったが、やはり日本と似ている。しばらく行くと早速樹液の出ている木を発見(というより、教えてもらった)。日本の樹液の出方にそっくりだ。早速ドルクス発見。♂1ゲット!

二本目発見!!(左写真)。こいつは水のごとく樹液が出ている。木の下にいるとぽつりぽつりと樹液が降ってくる。ここには、あの赤いオサムシも樹液をちょうだいしていた(下写真)。そのほか、あのサメハダクワガタが、うろちょろしており、いくつか採れた。一人の女が、木の根元を掘りはじめた。「ほほう、日本と同じだな」なんて思っている内に5匹ほどぽろぽろと出てきた。そばに落ちていた朽ち木をどかすと更に出てくる。普通種なのかというほどいたのだが、そうでも無いらしい。いるところにはいて、他は全然いないのだそうだ。実はこのとき、3種類ほどもゲットしていたのとは知らなかった。こいつらもよく見ると、なかなか良い。

「そいつらは日本でも飼育できると思うよ」とセルジオ氏。どういう意味なのかな?。


暗いところでは、古安デジカメはだめね。まともに写った少ない写真 (T_T)。

結局午後3時ころから7時まで彼女らの「仕事場」を回らせていただいた。ここは初夏の上にサマータイムを適応している国なのでよる9時まで明るい。いくら日が長くても山の中にいて日が暮れるとさすがに、真っ暗になるとのことで早々と下山を始めることにした。「夜は灯火採集があるさ」とウキウキしながら歩いていくと、あのでかいカミキリがあちらこちらに落ちている。犬たちにとってこいつはご馳走らしく、しっぽをちぎれんばかりに振って、大喜びでそいつらの腹の部分だけを器用に食べる。彼女たちにとっても、こいつらは収入の一部であるため、犬と人間の奪い合いが始まる。圧倒的に有利なのは犬である。少しでも噛んで傷を付けてしまえばいいのだから。緑色に輝くウグイスコガネもあちらこちらに落ちている。拾ってみるが、損傷がひどく、標本には使えない。「そういえば、某TVのK氏が欲しがっていたな」と思い、生きている奴が欲しいと聞いてみたが、何でもシーズンは先週までで終わっており、捕まえたとしても寿命は8〜10日なのだそうだ。

そして、悪夢の灯火採集になるとも知らず、満足して宿に戻るのであった・・・。


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